仕事に傾倒しても仕方がないなというバランス感覚を持った

 幡野さんは、2017年からがん治療を始めた。その一方で、現在も写真家や文筆家としての活動を続けている。しかし、がん発覚後は、仕事に対する考え方が変わったという。

「以前は、仕事に全力を注いでいた時期もありましたが、今は、肩の力を抜いています。仕事で僕の代わりはいくらでもいるし、どれだけ頑張っても、がんが悪化したらその瞬間に終わりですしね。これは、諦めというネガティブなものではなくて、仕事に傾倒しても仕方がないなというバランス感覚を持った、という意味です」

 さらに、通院先の病院では、他のがん患者さんたちからこんな言葉をよく聞くという。

「“私生活を犠牲にしてまで仕事を頑張るんじゃなかった”って、そんな後悔を口にする人がたびたびいますね」

 多くの人が働き方に悩む時代……。「後悔しない働き方ってあるんでしょうか?」というわれわれの質問に対して、幡野さんは少し考えてこう答えた。

「仕事を頑張る気持ちは大切ですが、それを人生の1番目に固定しないこと。人生の1番は常に空欄にして、仕事や家庭、育児、自分の趣味、たくさんの2番目を持っておく。そして、今は仕事を1番にしよう、今は子どもとのコミュニケーションが大切だから、育児を1番にしようといった感じで、そのときの状況によって優先順位を変える。

 2番目がたくさんあれば、いくらでも替えがきくので、気持ちが楽になりますしね」