オーディションで喜びよりも勝ったのは、恐怖心だった

ーー当時流行っていたギャル雑誌『egg』に載っていた、『写ルンです』のコラージュみたいなノリですね。

鈴木「そうそう。この写真のことは、今でも会うたびにずっと小室(哲哉)さんに言われるんです。ほかの子はちゃんとスタジオで撮っているのに、私だけそんな写真だったのが衝撃だったらしくて。“こんなになにも考えていないオーディション参加者、初めてだった。あの写真が忘れられない”って。“だから良かったんだろうね。それで亜美が際立っていたから”とも言ってくれます」

「ヴォーカリストオーディションファイナル」は、その日のうちに書類審査から歌唱審査までをこなすハードなオーディションだった。鈴木さんは約5000人が参加した書類審査から、面接、歌唱審査と最後まで残ったが、喜びよりも勝ったのは、恐怖心だったという。

鈴木「うちは門限が5時ですごく厳しくて。部活で5時を過ぎるときは電話をして、遅くても7時までには帰っていました。この日はお母さんに内緒で来ちゃったし、初めて部活以外の理由で門限を破っているし、気が気じゃなくて。面接が7時頃に終わって、そのあとで歌の審査があるし……」

ーーものすごい長丁場だったんですね。

鈴木「そうなんですよ。一緒に行った友達はみんな落ちてしまいましたが待っていてくれて、お母さんに電話をかけてくれました。そうしたら案の定、お母さんブチギレ。“なにやってるの! 早く帰ってきなさい!”って。私は“とりあえず歌を歌ったら帰るから。本当にごめんなさい”って平謝りです。だからもう怖くて怖くて。これで受からなかったらどうしよう! と焦っていました(笑)」