小説家・吉本ばななの作品は多くの読者から親しまれている。1987年のデビュー以来、著作は全世界で30か国語以上に翻訳され、映像化作品も多数。国語の教科書にも作品が掲載されており、いまも10代、20代の若い読者の心を揺さぶっている。そんな吉本さんの「THE CHANGE」を深堀りした。【第2回/全5回】

吉本ばなな 撮影/湊亮太

 吉本ばななの書き下ろし最新作『はーばーらいと』(晶文社)は、主人公の男の子・つばさとヒロインのひばり、そしてひばりの家族が信仰する宗教コミュニティからの脱出などが描かれている。文中、ひばりのルックスは「北原里英坂本美雨を足して2で割った感じ」と描写されているのだが……。

――『はーばーらいと』を読み進めていると、急に実在の人物の名前が登場して驚きました。

「でも、ほんとうにその人物たちしか浮かばなかったんです(笑)。昔だと、特定の人を挙げると“誰だ”ってなるんだけど、今はみんな、編集の人も読者の人もネットで調べられるし、海外に訳されてもネットで調べられるからいいなと思って。

 ちょっと前というか、2,30年前とかだと、“特定の人の名前は出さないで”とかけっこう言われました」

『はーばーらいと』の作中に登場する宗教団体の着想源は何だったのか。

「もうちょっと規模が小さくて、たとえば下田とかに行くと山の中に団体で住んでる人たちがいて。ヴィーガンとかそういう思想を基にした村を作ったり、そういう人がいっぱいいるので、それぐらいの規模を想定していました」