鬼才と呼ばれ、熱狂的なファンを擁する漫画家・新井英樹。『宮本から君へ』『ザ・ワールド・イズ・マイン』『キーチ!!』といった作品からは激情がほとばしり、痛みをともなって読者に降りかかる。「20年間の引きこもり」を経て、新たな境地を見出した新井さんのTHE CHANGEを聞いた。【第3回/全5回】

新井英樹 撮影/冨田望

「作業場で撮影したい」というこちらの意向を快諾してくれた漫画家・新井英樹さん。

 自宅ということで、リラックスしたTシャツ姿だったが、そのフロントにはボンテージを身にまとうお姉さん2人組が描かれている。

 6月12日に1・2巻同時発売した新作『SPUNKー スパンク!ー』(KADOKAWA)の登場人物である双子の女王様だ。

 そのモデルとなったのは、ビザールラウンジ『京都バルバラ ーBARBARA the bizarreー 』主宰の龍崎飛鳥女王様。『SPUNKー スパンク!ー』に“参謀”として名を連ねる鏡ゆみこさんも、カミングアウトサロン『EUREKA』を主宰し、女王様という肩書きを持つ。

 新井さんがこの作品を描いたのは「ゆみこさんが話す女王様の話やM男さんの話が常におもしろくて。どれもこれも、“生きている人たちだよな”って。それで、“描いていいなら、描きたいんだけど”って」というシンプルな衝動だった。

 取材に同席した新井さんの担当編集者である『月刊コミックビーム』編集部の清水速登さんが補足する。

「連載が決まる数年前、新井先生に今一番描きたいものをうかがったとき、“蒼井優とペ・ドゥナみたいな女の子が、人をバッサバッサと倒すみたいな話が描きたい”とおっしゃっていて」