三宅裕司、72歳。喜劇役者、司会者、ラジオパーソナリティ、そして劇団主宰。驚くべきバイタリティとマルチな才能で多様な仕事をこなす……そんなイメージの三宅さんだが、これまでの芸能生活で、人知れず苦悩を抱えたこともあった。人生を変えたTHE CHANGEとはーー。【第1回/全5回】

三宅裕司 撮影/川しまゆうこ

「ようやくあの服、着てくれたんです。自分で気に入ってスタイリストさんから買ったのに、1度も着ないままクローゼットの奥にあったから」

 撮影中、三宅裕司さんのマネージャーさんが、そっと教えてくれた。それに気づいた三宅さんは「え? なになに」と、カメラのレンズからこちらに視線を移す。

ーー今日の服、ステキですけど、いままで1度も着たことがないと聞きまして……。

三宅裕司(以下、三宅)「このフード? みたいな部分が着たときになかなか決まらなくて……。一度そう思うと、この服に手が伸びなくなって。今日、マネージャーに“あれを着ていけばいいじゃないですか”と言われて、そんなのあったかなあと、思い出すのにずいぶん時間がかかっちゃった」

 現在、72歳。みなが「ヒザ下が長い」と口をそろえ、どんな服でも似合いそうなすらりとした体形は、とても70代とは思えず、舞台上でダイナミックに動く姿が目に浮かぶ。

 10月19日からは、主宰する「スーパー・エキセントリック・シアター」の本公演「ラスト・アクションヒーロー~地方都市に手を出すな~」がはじまるが、今年で61回目の本公演だという。1980年から2023年まで、毎年積み上げてきた驚異的な数字だ。

 設立から44年目。「一度も解散の危機はなかったのですか?」とたずねると、三宅さんは旗揚げ間もない頃を振り返り、話しはじめた。