三宅裕司、72歳。喜劇役者、司会者、ラジオパーソナリティ、そして劇団主宰。驚くべきバイタリティとマルチな才能で多様な仕事をこなす……そんなイメージの三宅さんだが、これまでの芸能生活で、人知れず苦悩を抱えたこともあった。人生を変えたTHE CHANGEとはーー。【第4回/全5回】

三宅裕司 撮影/川しまゆうこ

 2011年7月30日、脊柱菅狭窄症により両足が動かなくなり、緊急手術を行った三宅裕司さん。その後、年内の休養がマスコミに伝えられ、決まっていた舞台などの仕事はすべて中止となった。

 医師からマネージャーには「障害が残る可能性」が伝えられていたが、三宅さんにはその事実は伝わっていなかった。

ーー足が動かないという状態で、どんな心境で病院ですごしていましたか?

三宅裕司(以下、三宅)「僕はリハビリ病院にいて、顔が割れていますから、“あの三宅裕司がこの病気にどう立ち向かっているのかを、常に見られている”という意識が働いていました。だから落ち込んでいる暇はないんですよ。そういう姿を見せたくない。常に前向きで、冗談なんか言ったりしてね。

 でもね、冗談を言ってもみんな笑わないんです。そういう状況じゃないってわかっていますから」

ーー三宅さんだけが、深刻な状況だと知らなかったんですもんね。

三宅「リハビリ病院の病室が8階くらいにあったんですよ。それで、夏の晴れた日に富士山がすっごくキレイに見えたんですよね。リハビリの先生に、“今日、富士山キレイに見えましたね”と言ったら、先生がこう言うんです。“三宅さん、2月になったら冬は空気がキレイだから、もっとキレイに見えますよ”と。それで、えっ、俺、2月までいるの? と」

 リハビリ医がすべらせた言葉から恐怖心が芽生えた。手術から3か月後に足がピクリと動くようになってからも、つねにその恐怖はこびりついていたという。