事務所に“ちょっと1か月休ませてください”
――そうなんですね。
「NHKは向こうでも放送していますし、『ちりとてちん』もいつも見られていると聞いて。それで撮影が終わってから、なんとか番組でも企画して行けないかなと思ったんですけど、当時は僕自身、そんなに注目されていませんし、話してみたものの、当然企画は通らず……。でも、このタイミングしかないと。それで事務所に“ちょっと1か月休ませてください”とお願いして、自費でブラジルやペルー、パラグアイといった日本人コミュニティを回ったんです。朝ドラのギャラぜんぶつぎこんで(笑)」
――自費で? というか、朝ドラ出演直後だと、大きな注目が集まっている時ですよね。よく事務所も許可しましたね。
「僕の役がヒロインの相手役でしたからね。許してくれたというか。まあ……(笑)。でも僕としては、こっちのほうが大事だと思ったんです。徒然亭草々という落語家の役だったので、落語を一席きっちり覚えていきました」
――実際に行かれてみていかがでしたか?
「日本人のおじいちゃんもおばあちゃんも、本当にみなさん朝ドラも大河ドラマも見ているんです。大歓迎でしたね。200人の前で落語をしました」
――おお、行ったかいがありますね。
「朝ドラのあと、そのまま日本にいて、お仕事をしてキャリアを築くことも大切だったと思いますが、僕としてはまずこの仕事、“エンターテインメント”というものの神髄というか、本質を知りたかったんです」