「人間は一生“ツガイ”になりたがるものなんだな」と思った中目黒での光景

――野生、ですか。

「中目黒の遊歩道で、ふと目の前を2人で歩いていた老夫婦を見たときに“野生のツガイだな”と思ったんです。人間として生きてきて、道路という人工物の上を、本人たちの自由意思のもとで歩いているこの人たちは、すでに生殖行為もしない老夫婦なのに“ツガイ”として生きているんだなって」

――老夫婦の姿に“ツガイ”という野生を見たんですね。

「性的嗜好や相手が同性の場合もあるけれど、人間は一生“ツガイ”になりたがるものなんだなと思って。その意味とか、なりたい欲求は、今の僕にはないですけど。ただ田舎に住んでいると、“一人でずっとは大変だよ”っておじいちゃんに言われます(苦笑)。“大事な人は作るべきだよ”って」 

――周りの方に心配してもらっているんですね。

「ひとりって大変なのかな。将来はそう感じるようになるの? と考えることもありますけどね。先人の言葉も聞き入れるのなら、いつかはできるのかもしれないけれど、でも今はないです」 

 カメラがある限り、完全な“素”ではないのはその通り。しかし、バラエティ番組で見せる東出さんの素顔は魅力にあふれている。一度は「消費された」との思いがありながらも、周囲をシャットアウトせずに生きるその姿勢が、自然と伝ってくるからだろう。

■東出昌大(ひがしで・まさひろ)
1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。高校時代にメンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリを獲得。2006年から2011年までパリ・コレクションにモデルとして出演。2012年の映画デビュー作『桐島、部活やめるってよ』から俳優に転身。2013年に出演したNHK朝ドラ『ごちそうさん』のヒロインの夫役でブレイク。『聖の青春』『菊とギロチン』などで評価され『コンフィデンスマンJP』などでも人気を博すも、2020年、私生活のスキャンダルで公私ともに影響を受け、フリーランスとなる。現在、2023年4本目の公開作となる、ニヒルな“ヒモ”男を好演する偶像劇『コーポ・ア・コーポ』が公開中。関東近郊の山小屋で自給自足の生活を送っているが、2024年もその狩猟生活を追ったドキュメンタリー『WILL』を含め、すでに3本の映画が待機している。