上品で柔和な微笑みが「やさしいお母さん」のイメージを後押しする、俳優の市毛良枝さん。一方で、キリマンジャロ登頂や南アルプス単独縦走を成し遂げるなど、本格的な登山愛好家としての顔も持つ。豊かな人生経験がにじみ出る市毛良枝さんの、THE CHANGEとは。【第4回/全5回】

市毛良枝 撮影/三浦龍司

 静岡県は伊豆修善寺町(現・伊豆市)で生まれた、俳優の市毛良枝さん。プロフィールを確認すると、中学と高校は東京・杉並区の立教女学院に通っていたとあるが、「それが私の、THE CHANGEなんです」と、教えてくれた。

「12歳で親元を離れたことが、私にとって最初の大きな転機でした。親の教育方針で、生まれたときから“おまえは中学から東京に行くんだよ”と言われて育ったんです」

ーー最初から決まっていたんですね。

「実家は年寄ばかりの中の一人娘で、甘やかされ放題に甘やかされて。私の食べたいものを誰も取らない、という環境でした。それが逆に寂しいと思う子どもに育っちゃって。兄弟でひとつのものを奪い合うというあたたかさ、“いいなあ”って。うちでは、ケーキがひとつしかなかったら、“あなたが食べなさい”で、私がもらっちゃうから。それはイヤだ、みんなで食べたいんだと。

 だから私、いまだにケーキが1つしかないと、その場に5人いたら5等分にわける人間なんです(笑)」

 至れり尽くせりの実家を離れ、東京の親戚宅に暮らすことになった市毛さんが入学したのは、女子校。「それが清々しかった」と、穏やかで居心地のよい学校生活を述懐する。