ドリフの楽曲でデビューしたっていうのが大きな転機だった

 学生からプロの作詞家へ。思わぬ方向への転機を迎えた森さんだが、作詞家としての意識が芽生えたのはいつ頃からだったのだろうか。

森雪之丞 撮影/冨田望

「いや~思い出せないね。僕は他にできることなかったし。でも会社に入って働きたいっていう気持ちはなかった。その当時は、未来が明るかったからね。なにかやりたいものが見つかったら、みんなトライしていた。もちろん途中で挫折する人もいたけれど、みんな夢に夢中だったんじゃないかな(笑)。

 僕は音楽やパフォーマンスの世界で生きていきたいと思っていた。大学にはまともに通っていなかった分、その頃から音楽出版社に声をかけてもらって、プロになれたのは早かったって思うんです」

 森さん自身も、ドリフターズでの楽曲でスタートしたことがよかったと語る。

「僕よりも上の世代はフォークロックの人たちから、作詞家や作曲家になった人も多い。自分の場合は、デヴィッド・ボウイやプログレに影響を受けているのだけれど、ドリフの楽曲でデビューしたっていうのが大きな転機だったと思います。

 最初の1年間はアイドルの曲を中心に書いていました。なかでもキャンディーズの歌詞を書けるのは嬉しかった(笑)。キャンディーズは本当に魅力的だったし、集まっていた優秀なスタッフからも色々と学べました。まさか自分が女性の歌詞を書けるとは思っていなかったんですが、キャンディーズのミュージカルも書かせてもらって、今から思えばどうして書けたのか不思議なのだけれど(笑)」

 自身のキャリアについて謙遜気味に語る森さんだが、会話の節々からは、自選詩集『感情の配線』にも表れていた言葉選びのセンスが感じられる。天職ともいうべき作詞家という仕事についてくれたことを、日本中が感謝しているに違いない。

●もり・ゆきのじょう
1954年1月14日生。東京都出身。作詞家、詩人、劇作家。大学在学中からオリジナル曲のライヴを始め、プログレッシブ・ロックバンド『四人囃子』のゲスト・シンガーとしても活躍。1976年に作詞&作曲家としてデビュー。以来、ポップスやアニメソングで数々のヒット・チューンを生みだす。90年代以降、布袋寅泰、hide、氷室京介など多くのロック・アーティストに詞を提供。リリースされた楽曲は2700曲を超える。詩人として、94年より実験的なポエトリー・リーディング・ライヴ『眠れぬ森の雪之丞』を主催。初の自選詩集「感情の配線」を2024年1月14日に発売。

作品情報
タイトル:森雪之丞自選詩集『感情の配線』
発売日:2024年1月14日
価格:2,500円(税別)
森雪之丞が1970年代より行動する詩人として、紡いできた珠玉のことば[詩]。
既発の詩集『詩画集 天使』『近未来詩集』『絶望を愛した38の症例(サンプル)』『天才的な恋』『扉のかたちをした闇』から著者自身が厳選し、さらに文芸誌『すばる』で連載時から話題となった天才・森雪之丞の生み出した図形詩が初収録。他、Act Against AIDSでの朗読の為に書下ろした詩作など、森雪之丞初のオールタイムベスト詩集。

イベント情報
1月25日には、出版を記念して代官山 蔦屋書店にてイベントを開催。森雪之丞が特別なゲストに猪塚健太、牧野由依、礒部花凜を招いてポエトリーリーディングの魅力を届ける。イベント参加チケット、及びオンライン参加チケット付き書籍は、1月13日17時より発売開始。自選詩集「感情の配線」、そして発売イベントの詳細は、森雪之丞オフィシャルサイトにて。