作詞家・森雪之丞の世界ははてしなく広い。『ドラゴンボールZ』から『キン肉マン』、『プリキュア』といったアニメの楽曲から、布袋寅泰氷室京介、さらにはキャンディーズシブがき隊といったアイドルの曲も手がけてきた。激動の時代を越え、48年目を迎えたレジェンド作詞家の人生の転機とは?【第2回/全5回】

森雪之丞 撮影/冨田望

誰もがつい口ずさんでしまうような、インパクトのある森雪之丞さんの歌詞。その自由な発想の源はなんだろうか。

「じつは初めて語ることなんだけれど、子どものころに、クレイジーキャッツの影響をすごく受けています。『紅白歌合戦』にクレイジーキャッツが出る年があって、今のように出演順がわからなかったから、大晦日に風呂に入れられる時には、親に“もしもクレイジーキャッツが出てきたら、風呂が途中でもいいから絶対に呼びに来て! “って頼んでました(笑)。それくらい夢中になっていましたね」

 森さんが作詞家としてデビューした70年代は、それまでの演歌やフォークから、音楽も多様なジャンルが増えてきた時代だった。

「大瀧詠一さんもクレイジーキャッツの影響を受けているのですが、彼が松本隆さんと組んで大ヒットする以前のアルバムには、いっぱい遊び要素があったんです。もともとアメリカにも『冗談音楽』といってギャグが入っている音楽のジャンルがあって、そういう意味では、クレイジーキャッツの影響を受けている人って多いのかもしれない。僕のデビュー作もドリフターズですからね。そういったものは、クレイジーキャッツで培われたんだと思います」

 大学に通いながらミュージシャンを目指していた森さん。彼がプロの作詞家になったのは、いろいろな偶然が重なったのがきっかけだった。