子どもの絶大な支持を受けた「大逆転のライブ」
小島さんの代名詞といえば海パン一丁で「そんなの関係ねえ! ハイ、おっぱっぴー!」とハイテンションで踊りまくるネタである。見たことがないひとのほうが少ないのではないかと思うほど、いまでは国民的なギャグとなっている。
そんな小島さんはある時から「子ども向けのネタ」に取り組むようになった。裸芸でブレイクした小島さんからは想像できないような方向転換ともいえるが、そこにはどんな思いがあったのだろうか。
「2011年頃なんですけど、当時『クイズ!ヘキサゴンII』っていう番組に出ていまして、そこはバラエティの達人みたいな人たちがいっぱい集まっているスゴい現場だったんですよ。そこで出演を重ねるうちに“このままだと芸能界に居場所がなくなっちゃうな”という不安に駆られるようになっていったんですよね」
『クイズ!ヘキサゴンII』といえば、当時大人気だったテレビ番組だ。芸能界を引退する前の島田紳助がMCを務め、出演していたつるの剛士、上地雄輔らで結成した音楽ユニット「羞恥心」は大人気となり、NHK紅白歌合戦にも出場。番組で活躍した里田まい、スザンヌ、木下優樹菜らはおバカキャラとして大ブレイクし、各局のバラエティ番組を席巻していた。
つまり当時のテレビバラエティの中でも中心的な存在となっていたこの番組で、出演者同士がどうやったらウケるのか、という熾烈なバトルを繰り広げていたわけで、その渦中にあって小島さんが日々大変な苦労をし、先々のことまで心配しはじめてしまうのは、無理もない話だったのだ。
しかし、ここで小島さんにある転機がやってくる。それは当時事務所の先輩だったお笑いコンビ・東京ダイナマイトの松田大輔さんからのなにげないアドバイスだった。
「松田さんから“子ども向けのネタをやってみれば”って言われたんです。それまでは会場に来ているちっちゃい子どもたちが、始まって少しすると“帰りたいよ”って泣いちゃうようなライブをやっていたんで、驚きましたけど(笑)。
でも、言われてみれば子ども向けのライブをやっている芸人はあまりいないし、もしかしたらいけるかも、と思って始めてみたんですよね」
こうして小島さんは一念発起し、子ども向けのライブに取り組み始めた。その内容は、野菜が嫌いな子供が野菜を好きになるように「ごぼうの歌」や「ピーマンの歌」を歌ってあげたり、小島さん演じる正義のヒーローが変身するためのアイテムとしてバナナを探しているが、そのバナナは海パンの後ろに隠してあって、子どもたちの「よしお! 後ろ!」といったリアクションを引き出させるもの。始めてみると、これが評判を呼んだ。
「やってみたら非常にウケたというか、正確には最初のころは子どものお客さんが今みたいにはまだ多くなかったんですけど、 関係者の人とか芸人の先輩とかがすごい面白いねって言ってくれたんです。だから“これは、ちょっと続けてみようかな”って思うようになっていきました。少なくとも今までやっていた子ども向けじゃないライブよりは手応えがあったので」