ネット投票でダントツ1位になるも……

 関西と東京都の往復生活で、浜崎さんは体調を崩してしまった。

浜崎「体調が悪くなった時に、『少女は二度死ぬ』を全国流通しませんかってお話が来たんです。そのタイミングで“今かも”って思って上京しました」

松永「確かに彼女が加入してから、いろいろなオーディションにも残るようになっていた。とあるインディーズのオーディションで、何千組の中から上位5位に残ったんです。しかも1位になったらメジャーデビューができる特典があった。

 僕らのファンの方は熱烈に応援してくれるので、きっとたくさん投票してくれたんだと思うのですが、ほかの審査結果も加わって上位5組の中で最下位だった。でもその時に残っていたほかの4組のバンドはもう活動していません」

浜崎「あとから聞いた話によると、ネット投票では断トツでアーバンギャルドが1位だったらしいんですが、“こいつらを1位にしたくない”っていう大人の事情で順位を下げたって聞きました。でもそのときにデビューするよりも、後の方がタイミングとしてよかったって後になって思いました」

 浜崎さんの加入がバンドにとっての「CHANGE」となったのか、09年3月に『少女は二度死ぬ』を特装版として全国流通で発売し、その後11年7月にはユニバーサルジャパンからシングル『スカート革命』でメジャーデビューを果たした。

松永「タイミングって大事だと思うんですよ。それまで本当にシンプルなTシャツを着て歌うロックンロールが全盛だった時代が続いていたのに、ちょうど時代が変わってきて、打ち込みを入れるバンドが増え始めてきた。

 たとえば、オタクや陰キャが作る音楽の要素が、ロックバンドに入ってきた。折しも、初音ミクブームやPerfumeがブレイクしたり、相対性理論や神聖かまってちゃんというような新しい感覚のバンドが出てきたのがちょうど08、09年あたりなんです。そこにうまくアーバンギャルドは乗ることができたかなって思っています」

松永天馬 撮影/冨田望