20年続けてきた俳優業
――そうした思いもあった作品ですが、実際にクランクインしてみていかがでしたか?
「話が早いと思いました。芝居で会話できる。それぞれが役として準備してきたものもあるやろうけど、それぞれの時間を必然的に受け止め合えるというか。たとえば石田くん演じる朔と再会するシーンは、ぎこちない会話から始まるんです。
そこも、実際の自分たちの時間を乗せることができました。石田くんも、俳優から離れて農業をやって自分と向き合う時間を持ったりとか。途中、実際にいろんなことがあったと思うし、各々に時間の使い方があったと思うんです。そうした、それぞれに生きてきたことが、何ひとつ無駄にならないんだなと」
――自分自身の人生が、役への厚みにもなると。
「自分もそうやし、高良くん、石田くんを見ても感じました。そういうことって、自分のこれまでを思い返して感じることはあっても、相手から感じることってあまりないんです。でも高良くん、石田くんからは感じた。“俺たち、20年生きてきたよな。この仕事で”って。それはこのふたりやから、できたこと、感じられたことなんじゃないかなと、すごく思います」
――同じ時代を生きてきた中でも、特別なおふたりなんですね。芝居で会話をしていたとのことですが、実際の会話もいろいろされたのですか?
「しましたよ。芝居に関してじゃなくて、個人個人のいろいろなことを。不思議ですけど、信用し合っている感じがすごくしました。一緒に仕事ができて、本当に気持ちがいいふたりなんです」
――ちなみに、お話にも出たように、本作は監督の故郷で撮られています。最後に、大東さん自身のふるさとへの思いも教えてください。
「どれだけ離れても、どんだけ時間を置いても、自分がそこで生まれ育ったということは消えません。始まりの証みたいなものが、そこには残っている。僕は、ことあるごとに地元に墓参りに帰るんです。
よくも悪くも、人って変わって成長していくわけですが、自分を戻してくれる場所ってすごく重要。ふるさとは、自分の全部の基準になっている場所だと思います」
キャリア20年目へのの思いと、ふるさとへの思いの両方を聞かせてくれた 大東さん。「自分には誇れるものがなかった」と言うが、この20年間の積み重ねが、まさに今の映画やドラマで見せるさまざまな顔に繋がっている。この先の20年間も、俳優・大東駿介は、どんな顔を見せていってくれるだろう。
大東駿介(だいとう・しゅんすけ)
1986年3月13日生まれ、大阪府出身。2005年ドラマ『野ブタ。をプロデュース』でデビュー。09年後期の連続テレビ小説『ウェルかめ』で注目される。12年には大河ドラマ『平清盛』に出演。近年の主な出演作にドラマ『妖怪シェアハウス』『大奥 Season2「幕末編」』、映画『バイオレンスアクション』『Gメン』など。現在、ドラマ『仮想儀礼』『厨房のありす』が放送中。公開中の映画『罪と悪』では陰惨な過去と向き合う3人(高良健吾、大東、石田卓也)の幼なじみのうち、刑事となった晃を演じている。公開待機作に『映画 マイホームヒーロー』がある。
■作品情報
映画『罪と悪』
監督・脚本:齊藤勇起
エグゼクティブプロデューサー:古賀俊輔
プロデューサー:湊谷恭史
出演:高良健吾、大東駿介、石田卓也、村上淳、佐藤浩市(特別出演)、椎名桔平
(C)2023「罪と悪」製作委員会
配給:ナカチカピクチャーズ
公開:2月2日(金)