眼光鋭いアウトロー、不器用な愛され男子、完璧な仕事をこなす頼れる部下……高良健吾さんを思い浮かべるとき、さまざまな作品での印象的な役柄を同時に想起してしまう。その共通点は、作品に対する真摯なまなざし。作品ごとに、前作品でのイメージをいっきにチェンジする力を持つ高良健吾さんが語る、「THE CHANGE」とは。【第3回/全5回】

高良健吾 撮影/三浦龍司

 とある少年の死亡事件をきっかけに、同級生3人がそれぞれの「罪」と向き合うこととなる映画『罪と悪』。親から子への暴力、ネグレクト、血で血を洗う抗争、隠蔽ーー作中、さまざまな罪があふれ、ときには目をそらしたくなるシーンもある。主人公の春を演じた高良健吾さんは、同作出演をきっかけに、あらためて「罪」と「悪」について気づきを得たという。

「『罪と悪』という現場に立って、僕は”純粋な悪って、ないのではないか”という気がしました。『罪』はこの世にあふれていて、だから物語の舞台となった街に住んでいる人たちは罪人だらけだなと思うけど、純粋な『悪』はなかなかないというか。たぶん、その『罪』が重なっていったときに、『悪』に変わるのかな、と思いました」

ーーたしかに登場人物のほとんどが「罪」を犯していますが、「悪人」かといえば、そうではない気がします。

「これは日本の縮図でもあると思っていて。やっぱり、“なかったこと”にされる場所にいると、すごい閉塞感が生まれちゃう。いまの日本は、すごくいろんなことがなかったことにされて、うやむやにされて、僕たちも忘れちゃう……という場所で。だからこそ、『罪と悪』で春を演じて思ったことは、“なかったことにしたり、うやむやにする”ことは、大きな罪だな、ということです」