何度も転校を経験したことで得た気づき

 最初の何週間かは絶対に居場所がなくて。みんなが場所を作ってくれました。でもそこに自分が馴染んでいくかは、また別の話で。ポジティブに考えると自分を変えられるチャンスでもあるんですけどね。僕は比較的うまくできた方かもしれないけど、何度も転校を経験した人にしかわからない、なにかがあると思います」

ーーそこで処世術が身についたり。

「処世術はありますね。当時は処世術だとは思っていませんが、“でしゃばらない”ということは大事かも。転校生がでしゃばるの、絶対にダメですからね」

 自分に正直でいられない瞬間の連続が、人間が社会で生きるということ。実生活でそんなままならなさを意識してきたからこそ、高良さんの演じる人間は、血が通っているのだ。

高良健吾 撮影/三浦龍司

高良健吾(こうら・けんご)
1987年11月12日生まれ、熊本県出身。2006年に『ハリヨの夏』で映画デビュー。2011年に映画『軽蔑』で第35回日本アカデミー賞新人俳優賞、翌年に映画『苦役列車』で第36回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。2013年には映画『横道世之介』で第56回ブルーリボン賞主演男優賞・第23回日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受賞した。主演映画『罪と悪』やNetflix『忍びの家 House of Ninjas』が配信中。Prime Video「1122 いいふうふ」(2024/6配信)が控える。

映画『罪と悪』
オリジナル脚本で描く罪の真実と正義の在り方を解く、本格ミステリー。
何者かに殺された14歳の少年、正樹。彼の遺体は街の中心のある橋の下で発見された。同級生の春・晃・朔は、正樹を殺した犯人と確信した男の家に押しかけ、もみあいになる。そして男は1人の少年に殺される。彼は家に火を放ち、事件は幕を閉じたはずだったーー。
監督・脚本:齊藤勇起
出演:高良健吾 大東駿介 石田卓也
配給:ナカチカピクチャーズ
(C)2023『罪と悪』製作委員会
2月2日(金)全国公開