「何重かになってる声だよね、と言われますね」

――れいこの歌とのことですが、私は前田さんの“声”が好きです。ちょっと倍音のような。

「役者さんたちにも、たまに分析されます。みなさんにとって興味深い声らしくて。“その絶妙な声はどこから出てるんだろう” “何重かになってる声だよね”と言われますね。
 私の声に反応してもらうのは、同業者の役者さんのほうが多い気がします。これまでに4~5回共演していて、いまドラマ『厨房のありす』でも一緒の大東駿介さんにも、この間“やっぱりその声、特徴あっていいよね”と言われました。
 実は、子どもも同じ声なんです」

――そうなんですね!

「同じような喋り方で、同じ声。たぶん出しているところが一緒なんじゃないですかね。顔も似てるんですけど、男バージョンの私2号です」

 そう言って優しい母親の顔になった前田さん。“声”は、俳優にとって強力な武器になる。自身の人生の深みも増しながら、これからも「絶妙な声」で、前田さんだからこその役を生んでいってくれるに違いない。

まえだ・あつこ
1991年7月10日生まれ、千葉県出身。2005年、アイドルグループ「AKB48」の第1期生オーディションに合格し、AKB劇場のオープニングメンバーとして舞台に立つ。第1回、第3回のAKB48選抜総選挙で1位を獲得し、中心メンバーとして活動するが2012年に卒業。以降、テレビドラマや映画、舞台に多数出演し、俳優として活躍している。2019 年に映画『旅のおわり世界のはじまり』と『町田くんの世界』で第43回山路ふみ子映画賞女優賞を受賞。近年の主な出演作に、映画『コンビニエンス・ストーリー』『もっと超越した所へ。』『そして僕は途方に暮れる』、ドラマ『育休刑事』『かしましめし』『彼女たちの犯罪』。2024年は『厨房のありす』が放送中。三島有紀子監督のオリジナル脚本による映画『一月の声に歓びを刻め』で、カルーセル麻紀、哀川翔とともに主演を務める。

●作品情報
映画『一月の声に歓びを刻め』
脚本・監督・プロデューサー:三島有紀子
出演:前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔、坂東龍汰 ほか
(C) bouquet garni films
配給:テアトル新宿  公開中