大事にしている「現場で感じたことが大事だという気持ち」
翔太は、奥平さんが演じるからこそ深みを増した人物になった。
――古厩監督が、弟やお父さんに“受け身”な感じの翔太の性格は、奥平さんが色を付けたとコメントされています。
「あまり意識してやっていたわけではないんです。演じているのはフィクションですけど、でも翔太の家庭の問題とかって、簡単にわかったつもりで想像して演じていいことじゃないと思うんです。だからというか、現場で、いま翔太ならどんなふうにいたらいいだろうと決めたいと思って。監督のおっしゃった“受け身”に自然となっていったのかなと思います」
――監督からの指示は。
「もちろん最初に役についてお話はしましたけど、それ以外は自由にやってほしいと言っていただいたので、僕も自由にやってみました。もしダメなら監督が言ってくれると思ったので。ある意味自分の感覚で、翔太ならどうするかなと」
――翔太は、役柄の紹介として無理やり簡単に表そうとするなら「金髪にピアスの陽キャのビギナー」になりますが、もともと人は一面的ではないですし。
「そうですね。いろんな面がありますし。それぞれの面の理由も自分なりに考えていましたが、それも理由にとらわれ過ぎると固くなってしまうので、割と感覚でいきました」
――現場での感覚を大事にするという部分は、デビュー作『ＭＯＴＨＥＲ マザー』での経験も大きいですか？ 当時、うまくいかなかったときに、大森立嗣監督から「自分がその場で感じたものをそのまま表現すればいいんだよ」と言われて、その時の感情を優先したらできるようになったとお話されていました。
「やはり僕の基盤になったものなので。年月が経つにつれてより大事になってきています。作品を重ねれば重ねるほど、強く思うし、忘れたくないと思っています。せっかく大森監督に教えていただいたことですから。たくさんのことがありますが、なかでも特に、現場で感じたことが大事だという気持ちは、『ＭＯＴＨＥＲ マザー』のときから変えていませんし、ずっと持ち続けて変えていません」
デビュー作は俳優人生の大きな指針になるものだろう。それを長澤まさみさん主演、大森立嗣監督の『ＭＯＴＨＥＲ マザー』で引き当てたというのも、奥平さんの運と実力。そして“基盤”をもとに、奥平さんはさらに進んでいる。
奥平大兼（おくだいら・だいけん）
２００３年９月２０日生まれ、東京都出身。２０２０年、『ＭＯＴＨＥＲ マザー』で長澤まさみ演じる秋子の息子・周平を演じてデビュー。同作にて第４４回日本アカデミー賞新人俳優賞、第９４回キネマ旬報ベスト・テン 新人男優賞、第６３回ブルーリボン賞新人賞、第３０回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞した。２０２３年度は、『あつい胸さわぎ』『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』『ヴィレッジ』『君は放課後インソムニア』にて第１５回ＴＡＭＡ映画賞最優秀新進男優賞に輝いた。ほか主な出演作に映画『マイスモールランド』『パレード』（Ｎｅｔｆｌｉｘ）、ドラマ『恋する母たち』『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』など。鈴鹿央士とＷ主演を務める映画『ＰＬＡＹ！〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』が公開中。３月２６日にドラマ『ケの日のケケケ』（ＮＨＫ総合）が放送予定。
映画『ＰＬＡＹ！〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』
監督：古厩智之
脚本：櫻井剛
出演：奥平大兼、鈴鹿央士、山下リオ、小倉史也
（Ｃ） ２０２３映画『ＰＬＡＹ！〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』製作委員会
配給・製作：ハピネットファントム・スタジオ
公開中
