本に関わる人たちとの出会いが突破口に

 そんなときに、’23年3月8日、『三千円の使いかた』が第4回宮崎本大賞に選ばれた。同賞は宮崎県内の書店スタッフや古書店員、図書館司書など、本に関わる人間が垣根を超えておすすめの1冊を選ぶ賞。発表式は宮崎市内の書店で行われるが、これまで受賞作家が発表式に参加したことはなかった。原田さんは思った、「行ってみようかな」と。

「いままで誰も現地に足を運んでいないということや、本に関わる人みんなが集まるというのを聞いて、すごく迷った末に行くことにしたんです。そこで歓迎してもらい、”宮崎を題材にした小説を書いてください”と言われて、”ああ、そういう貢献の仕方があるのか”と、目の前が開けたような気分になったんです。
 自分のためではなく、人のために書いて喜んでもらうという意義もあるのか、と。そこでまた、これから先の目標が見えたような気がしました」

 さらに同年10月、日本三大秘境のひとつであり、「日本で最も美しい村」のひとつとされる宮崎県椎葉村に誘われた。TikTokなどで活動しSNS世代の若者から絶大な指示を受ける小説紹介クリエイターのけんごさんと、同村図書館で対談イベントを行うためだ。

「宮崎空港から車で3時間かかると言われてビビりつつも、そこまで行き話を聞かせてもらい、“椎葉村のことを書くのもいいな”と世界が広がり、やる気が出てきたんです」