60過ぎても人生まだまだ深められます

 寺田さんが本著に込めた思い(目的)は「作品を読んで欲しい」ということであった。

「『1分音読』とか『3分音読』といった本はこれまでも結構出ているんですね。でも、私は時間で区切りたくなかったんです。内容で区切りたかったんです。もっと言えば、読書の入り口にしたかったんです」

 そんな寺田さんのリクエストで、山村方夫の『予感』は丸々全部(7ページ)が収録されている。

「そういう意味では,音読というより読み物の本じゃないかって言われています(笑)。私もちょっと、そっちに偏っちゃったのかなっていうのはありますね。必ず出典も含めて解説で使った本や粗筋も入れました。元々は『音読』がコンセプトなので、声を出しての朗読にさらに興味を持ってくれてもいいし、文学そのものに興味を持ってくれたら良いなって思っています」

 地の文では単に解説だけに留まらず、その本から読み取れる「生き方」などについて言及している。

「まさに自分を磨けるとか、自分に気付きのあるものにしたかったんです。私のアナウンサー経験や取得した認定心理士の資格とかを踏まえて、文学の中から気付きや学びを探し出していきたいということがあったんです。
 人って60歳を過ぎると段々と学ぶことが無いんじゃないかとか、80歳になると私は人生の全てを知っていますとかって思っている人がいると思うんです。でも、そう思っている人に、この本で“いやいや、人生まだ深められますよ”って、これまで見てきたことをもっと違う角度から見たら、人生に新しい発見があるんじゃないですか……ということを訴えたかったんです」

寺田理恵子(てらだ・りえこ)
1961年7月15日、東京都生まれ。聖心女子大学文学部卒業。A型。84年、フジテレビ入社。85~86年にバラエティ番組『オレたちひょうきん族』で2代目ひょうきんアナを務める。89年に結婚を期に退社、フリーとなる。98年に離婚。2000年に再婚し専業主婦として生活。しかし2012年に死別。2014年に復活。現在は朗読教室やアナウンススクールの講師を務めるかたわら、認知症サポーターとして朗読ボランティアや講演活動を行っている。

●作品情報
『日々の名作音読で人生の深みを知る』(さくら舎)
音読の力により人生の危機を乗り越え、再生させてきた著者が、音読の健康効果(自律神経のはたらきをよくし、ストレスを解消)にプラス、心の栄養にグッとシフトして音読作品をセレクト。古典から近代文学まで幅広い範囲から「生きるヒント」になるものを紹介。『四季を感じる毎朝音読』につづく音読本第3弾。