「一晩中立ってたんです」リハビリへの驚異的努力

「リハビリってちょっとずつしか改善していかないんですよ。それに腹が立って。やったらやったぶん、返ってきてほしい(笑)。

 かかとをやってしまったので、朝起きてベッドからの一歩が痛いんです。その日リハビリしてだいぶ良くなるんですけど、次の日起きると、またその一歩が痛いのがイヤで、一日中立って起きていたことがあるんですよ。

 そしたら、病院の先生に“すごい回復力だ”って言われて。“一晩中立ってたんです”と説明したら、“お願いだから、そういうことやめてください”って言われました。で、自分で、寝ているときも足が立っているときと同じ状態を作ればいいんだと思って機械みたいなのを作ったりとか……。だから、自分がやろうと思ったらどんな努力もするタイプかなって思います」

紫吹淳 撮影/冨田望

 宝塚歌劇団には、花、月、雪、星、宙(そら)の5組以外に「専科」という特定の組に所属しない集団がある。紫吹さんは正式に月組トップスターへ就任する前に専科となり、00年6月から7月にベルリンで行われた「宝塚 雪・月・花/サンライズ・タカラヅカ」で主演を務めることになった。華々しい舞台の裏側で、当時の紫吹さんは新たな試練に直面していたという。

「ベルリン公演で主演をさせていただいたんですけど、声が出なくなってしまって。帰ってきてすぐ手術という形だったんですけど、公演を最後まで迎えられるかっていうのも最大のピンチでした。

 ポリープかと思ったんですけど、私の場合内側が膿んでたらしくて。ポンってできたものを取ったあとから膿を出さなきゃいけない膿腫だったんです。だからけっこう手術が大変だったみたいで。