ユニコーンはコロナ禍をうまいこと切り抜けられた

翔吾「コロナの影響はデカかったよなあ。川西さんもライブなんて全然できなかったですよね」

川西「でも、ユニコーンはうまいこと影響を避けられたんだよね。2019年の末にツアーが終わって、2020年はどっちにしろ1年間休もうって話だったの。その翌年にレコーディングを始めたのかな。マスクは付けてとか制限はあったけど、ライブをやるのはOKになってたから、2021年にツアーをやったんだよね。結局、ユニコーンで中止になったライブっていうのは、山形の“やまぎん県民ホール”が新しくできて、こけら落とし公演を僕らがやるはずだったのが流れた、それだけだった。そういうコロナの波みたいなのを、うまいこと避けてやれてたんだよね」

翔吾「僕は、コロナ禍のせいで、賞をとっても、授賞式が全部なくなったんです。吉川英治文学新人賞、山田風太郎賞、それから直木賞もなんにもナシ。でも、負け惜しみじゃないけど、それがよかったんじゃないかって思うんですね。僕はいっぱい書いて磨いていくタイプだから、パーティとかにうつつを抜かさずに済んだ。昌弘さんは寝かして寝かしてボン、だけど、僕はとにかく稼働して、書いて書いてだから。作品に向かう時間が持てたことはよかったと思うよ。あちこちから声がかかって、執筆の時間がなくなってたらと思うとね。まあでも、賞を獲った実感がないんだよ。よく聞くでしょ、高級ホテルのローストビーフがとか、お寿司が、とか」

昌弘「選考委員の先生たちと三次会まで行く、みたいな」

翔吾「そういうのがまったくない」

―――川西さんは、よく小説を読みながら、どんな人が書いたのかを想像するとおっしゃっていますが、実際に昌弘先生とお会いしてみて、いかがでしたか。

昌弘「どんな人を思い浮かべてたんですか(笑)」

川西「作品の登場人物の性格って、やっぱり書く人の性格も出てくると思うんだよね。昌弘さんの作品のいいところって、トリックはもちろんあるんだけど、そうじゃないところ、ベースに恋愛とか、人との付き合いとかがあるから面白い。翔吾君の作品にも性格が出てるよね」

―――川西さんも昌弘先生の新刊を楽しみにしているようですが、次作の予定などは。

昌弘「明智恭介シリーズの短編がようやくまとまったので、6月ごろに単行本になる予定です。予定通りいけば、ですけど」

翔吾「書けへんかったら書けへんかったで、文字を大きくしてもらったりしたらどうにかなるやろ(笑)」

昌弘「そうなったら、翔吾さんの言う通りに、本に血しぶきをブワーっと垂らしましょうか(笑)」

 

■川西幸一(かわにし・こういち)
1959年広島県生まれ、広島県在住。ロックバンド「ユニコーン」のドラマーとして1987年にデビュー。「大迷惑」「働く男」などのヒット曲をリリースする。1993年2月にユニコーンを脱退し、バンドは同年9月に解散。2009年にユニコーンが再始動。最新アルバムは「クロスロード」。時代小説の大ファンとしても知られ、年間百冊近くを読破する。

■今村翔吾(いまむら・しょうご)
1984年京都府生まれ、滋賀県在住。2017年に発表したデビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』で第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。『童の神』で第160回直木賞候補、第10回山田風太郎賞候補。『八本目の槍』で「週刊朝日」歴史・時代小説ベストテン第1位、第41回吉川英治文学新人賞を受賞。『じんかん』で第163回直木賞候補、第11回山田風太郎賞受賞。2022年『塞王の楯』で第166回直木三十五賞受賞。最新作は『戦国武将伝(東日本編・西日本編)』(PHP研究所)。

■今村昌弘(いまむら・まさひろ)
1985年長崎県生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、放射線技師として働きながら小説を書き、2017年『屍人荘の殺人』で第27回九鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。同作は「このミステリーがすごい」で1位を獲得し、神木隆之介、浜辺美波の主演により映画化された。ほかに『魔眼の匣の殺人』、『兇人邸の殺人』、『ネメシスI』。最新作は『でぃすぺる』(文芸春秋)。