貞子やジェイソンのような…

――今後はAIをこんな風に使ってみようというアイディアはありますか?

「実は今、対話形式のチャットAIに、試しにホラー小説を考えさせています」

――ええ!

「それに、ただのホラー作品だと面白くないので、“AIをモチーフにしたホラー小説を考えて”と、チャットAIにお願いしています」

――とても面白い試みですね。

「ただ、現時点では、私が期待したようなものはできていません。というのも、“AIをモチーフにして”とお願いすると、AIを恐怖の対象にした小説ができちゃうんです。

 恐怖の対象というのは、たとえば、映画『リング』における貞子や、映画『13日の金曜日』における殺人鬼ジェイソンのような、その作品で最も恐れられている存在です。もちろん、AIの暴走によって主人公たちが窮地に立たされるといった作品もありですが、私の中では、まだまだAIを恐怖の対象として見ることができません」

――それはなぜですか? 

「私は、ホラー作品の恐怖の対象には、リアリティが必要だと思っています。現時点のAIはまだまだ距離感があり、私たちの生活に密接していませんよね? なので、AIが襲ってきたと説明されても、生々しさを感じないんです。

 そこで、最新作の『変なAI』では、画像生成AIを題材にはしましたが、あくまで、恐怖の対象は、そのAIの使い手である人間に設定しました。

 ただ、これから先は、AIがどんどん人間社会に入りこみ、私たちの生活に密接していくと思います。すると、AIを恐怖の対象にしたホラー作品が成り立つようになる。そうなれば、これまで見たことがない、新たなホラー作品が生まれるかもしれません」 

夢中になったAI作品

 AI×ホラーという新たなジャンルを模索している雨穴さん。そんな雨穴さんがハマった、AIを題材にした作品はあるのか聞いてみた。

「最近で思い浮かぶのは、逸木裕さんの小説『虹を待つ彼女』(KADOKAWA)です。『変なAI』の動画を作るにあたり、まずはAIをモチーフにした作品を読んでみようと思って、いろいろと探しているときに、この作品に出会いました。

 “死者を人工知能化するプロジェクト”を軸に展開していくミステリーがメイン要素になりますが、その一方で、“死者に恋をした主人公”という恋愛要素も入っています。ホラー作品ではありませんが、ストーリー自体がとてもよくて、物語の中に上手にAIを取り入れていたので、夢中になって読みました。オススメです」 

 AI時代に突入したことで、雨穴さんの創作活動は今後どのような変化を遂げるのだろうか。今から目が離せない。