演じた濱中圭介という役に対して、どう考えている?

 福士さんが演じた濱中圭介という刑事は、捜査のために時に法を犯しかねないところまで突き進んでしまう人物であり、一方では出産間近の妻をもつ家庭人の側面もあるという、実に複雑なキャラクター。この難しい役について、福士さん自身はどうとらえているのだろうか。

「本来は、捜査のためとはいえ法に触れてしまうようなことはやりたくないという正義感がある人物だと思います。財前直見さんが演じている松本という容疑者を、警察上層部からの圧力によって犯人に仕立てていこうとするのですが、濱中自身は犯人だと思っていないので葛藤を抱えていくんです。

 浅野忠信さんが演じる先輩刑事の伊佐美からも、彼女を犯人として追い込むように暴力的なプレッシャーをかけられますが、それに対しても圭介は必死に抗います。圭介には自分の信念みたいなものが捜査方針とは別のところにあるんだと思いますし、本当は純粋な男だと思うんです」

 劇中、福士さんが演じる濱中は捜査に対してプレッシャーをかけられ続けるのだが、その苦しみを体現する芝居は観ていて胸が苦しくなるほど真に迫っている。福士さんは続ける。

「ただ一方で、自分がこのまま“小さくまとまってしまう”ということには恐れを感じているんだとも思います。子供ができて父親になってしまうと、多分その先で上司からの圧力にも負けていってしまうのではないかという不安を感じている。