同世代で意識をしていた俳優は「木村拓哉さん」

 中でも、『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)に出演した際は、監督さんにも助監督さんにも怒鳴られるし。現場の厳しさを叩き込まれて、まさに修行でした。落ち込んでいる暇もないくらいテンポの早い現場で、楽屋が一緒だった山本耕史君には、よく慰められていました。

 大変ではありましたが、多くの共演者やスタッフの方たちとドラマを作り上げていく作業は本当に楽しいと感じましたし、4か月間の撮影が終わったら、まるで少林寺から出てきた修行僧のように、「すっごい鍛え上げられたな」と実感もしました。

 当時、同世代で意識をしていた俳優は木村拓哉さんです。ご本人に直接確認をしたことはないのですが、木村さんは台本をしっかりと読み込んで、役柄をイメージして、さまざまなパターンを用意して撮影に臨んでいる方だなと思っています。

 本当にストイックに演じていらっしゃる俳優です。一方の僕は……良く言えば“憑依型”ということになるのかもしれませんが、ちゃらんぽらんなパターンで。準備はせりふを入れてくるだけ。本番が始まると、パチッと役に変わって、そして、カットがかかると自分に戻るタイプですね。

 だから自分と違うアプローチをする木村さんの演技は、とても意識をしていましたし、俳優としてもすごく好きでした。

 あと、木村さんといえば、忘れられない思い出があります。ドラマ『未成年』(TBS系)に出ていた頃のことなんですけど、その撮影の休憩時間に、共演者とわちゃわちゃと話していたら、隣のスタジオで自らが主演を務める別のドラマの撮影をしていた木村さんが来たことがあって。木村さんは僕に「負けないからな!」と声をかけてきました。

 冗談か本気か分からないですけど、木村さんの主役としての責任感の強さを感じました。僕ももっと主役としての責任感を持たなきゃいけないのかな、視聴率とか気にしなければいけないのかなって考えていると、(『未成年』で共演の)反町隆史君が「気にすんなよ」と声をかけてくれたのをよく覚えています。

いしだ壱成(いしだ・いっせい)
1974年12月7日生まれ、東京都出身。父は俳優の石田純一。2歳のときに両親が離婚し、母に引き取られ、国内外を転々としながら育つ。16歳のときにオーストラリアでの留学から帰国後、父と再会して役者を目指すようになる。92年に俳優デビュー。以後、『ひとつ屋根の下』『未成年』『聖者の行進』などの大ヒットドラマに出演し、人気俳優となるが、2001年に大麻取締法違反で逮捕、執行猶予付きの有罪判決を受ける。2年間の謹慎期間を経て2003年に活動再開。以後、音楽や舞台などを中心に活動する。