『オールナイトフジ』に対抗せよ!『朝生!』誕生秘話

 のちにこの経験が直接役立ち、総一朗さんの代名詞とも言える番組『朝まで生テレビ!』が生まれることになる。

「当時の深夜番組は再放送ばかりだった。しかし、フジテレビが深夜に女子大生を出して『オールナイトフジ』(第2期1983~1991)をやって、人気になった。だからテレビ朝日も深夜番組をやりたいということになって、企画を考えてくれと当時の編成局長に頼まれた。

 しかし、深夜番組には2つ問題がある。1つは、制作費が安いから、有名タレントが出せない。もう1つは、刺激が強い番組でないと、見てもらえない。
 “じゃあ、テレビ界のタブーに挑戦する番組をやろうよ”と提案したら、それに乗ってくれた。それが『朝まで生テレビ!』ですよ」

 逆境を逆手にとり、チャンスへと変えていく冷静さと計算高さ。就活の失敗を「THE CHANGE」として現在の地位を築いた田原総一朗さんから、我々が学ぶべきものは多いかもしれない。

(取材/文 鎮目博道)

■田原総一朗(たはら・そういちろう) ジャーナリスト
1934年滋賀県彦根市生まれ 早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所、テレビ東京を経て77年フリーに。テレビ朝日系で87年より『朝まで生テレビ』、89年より2010年3月まで『サンデープロジェクト』に出演。テレビジャーナリズムの新しい地平を拓いたとして、98年ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞した。2010年4月よりBS朝日にて「激論!クロスファイア」開始。2019年ATP賞特別賞、2022年日本外国特派員協会「報道の自由賞」を受賞。著書に『原子力戦争』(筑摩書房)『日本の戦争』(小学館)『塀の上を走れ』(講談社)『さらば総理』(朝日新聞出版)など。

■田原敦子(たはら・あつこ)
1986年テレビ朝日入社。ワイドショーやドキュメンタリー番組のディレクターを経て「世界の車窓から」などのプロデューサーを経験。2002年より「徹子の部屋」のプロデューサーを担当。プライベートでは、41歳で双子男児を出産。