“学費が払えるのか”そして“階段を昇れるのか”
面接の場で聞かれたのは、「学費は払えますか?」と「6階まで階段で昇れますか?」のたった二つだけ。大変ヨシモトらしい。こうしてタツヨさんは晴れてNSC24期生、芸人の卵になったのである。
「でもね、その時点では芸人になれるとは思っていませんでした。とにかく舞台の勉強したい一心でしたから。NSCを卒業したら芸人の道があるってことさえ気がつかないままだったんです、私」
芸人になるつもりがないNSC生なんて、史上初だったのではなかろうか。
けれど、そんなタツヨさんだからこそ、夢に向かってギラギラした若者たちとも肩肘張らずに付き合えた。
「私にしてみれば、若い人の中に入れていただいたっていう気持ちですよね。こういう時、老人はちょっと一歩引いておいた方がいい。若い人とは体力が全然違うので、お世話にならなきゃいけない場面は必ずでてきます。これだけ年齢に差があったら考え方には色々違いもありますが、つねに若い人の意見を聞いてたら、みんな優しくしてくれます。知ったかぶりしてしゃしゃり出てばかりだと“勝手にやれば?”となるでしょうけれども、素直に“ごめん、これわからないんだけど”と聞けば“こうすればいいよ”と親切に教えてくれます」
そもそも、脇目もふらず「お笑い」を目指す若者と自分とでは、気構えからして段違いだと謙遜する。
「若いときから芸能界に入ろうと目指してきた人たちはやっぱり違うんです。歌もできるし、楽器もできるし。でも、私には何もない。芸事を習ったことはありませんから。特技が一切ない状態で入ったんです。だから、できないことはできないと認め、たまに私にできることがあればお手伝いする。そんなつもりでいました」