歴史ある宝塚歌劇団において、トップスターの座を6年にも渡り務めた柚希礼音。その華のある男役の姿は、いまも語り継がれている。宝塚退団後は、ミュージカルやコンサートを中心に幅広い役柄に挑戦。ファンを魅了し続ける当代きってのスター、柚希礼音の人生の転機とは?

柚希礼音 撮影/有坂政晴

 言葉に詰まることがなく、テンポよく取材に答えてくれた柚希さん。こちらの「つらかったことはありましたか? 」という質問に対しても、「すごく思い当たるようなことはなかった」と答えた。しかし、思い出したように柚希さんが語り出した。

「宝塚時代は、何度も“お芝居や歌に向いていないかも……”って思って、周りにも相談したりしました。そういうときって、だいたい叱られていて、“できないかもしれない……”って感じているときですよね。だからトップになるまでは、ずっとネガティブな気持ちもありましたし、落ち込んだりもしていました。
 世間や周りからはトップまでの道も順風満帆だねって言われたりしましたが、自分自身としてはぜんぜん、きっと周りの方々も、私ができていなかったのを見て“なんとかしなければ”と力になってくれたのが大きいです」