大学時代に日本各地の酒蔵を周った

 2012年、慶應義塾大学を卒業すると、ルイ氏はワインと日本酒の輸出入を中心とした商社を、自身の手で創業する。

「大学時代、日本全国の酒蔵を周ることもしていました。フランスにまだまだ知られていない良質なワインがあるように、日本にもたくさんの優れたお酒があることを知りました。
 ワインは世界中でその存在が知られていますが、当時は日本酒の知名度は今ほどではない。たとえば、パリのミシュランの星付きレストランのソムリエに日本酒を飲んでもらうと、“このお酒のブドウの品種を教えてくれ”なんて聞かれるくらい(笑)。日本酒がお米で作られていることも知らないんですね。もっとたくさんの人に魅力を知ってほしいと思い、事業を立ち上げました」

 ルイ氏の挑戦は、既存の価値観、フレンチ料理へのCHANGEでもあった。フランスに日本酒を提案し、新たなペアリングを実現させる。事業は好調、この先も好きなことをしていくつもりだった。父であるジョエル・ロブションが急逝するまでは――。

(つづく)

ルイ・ロブション
父親は世界で最も多くミシュランの星を持つ有名シェフとして知られるジョエル・ロブション、母親は博多出身の日本人で、フランスと日本の両国にルーツを持つ。慶應義塾大学を卒業後、2012年にワインと日本酒の輸出入を中心とした商社を創業、10年間代表取締役を務めた(現在は退任)。2019年、フランスに本社を置くジョエル・ロブション・グループの共同代表に就任。2023年4月、自身の名前を冠したスイーツショップ「Pâtisserie La Gare by Louis Robuchon」を兵庫県・芦屋に初プロデュース。2024年3月、初のショコラトリー『Éclat de Chocolat Louis Robuchon』を表参道にオープン。