「10年続けたら褒めてやる」と

――緒形さんのお父さま、緒形拳さんは、お子さんたちが俳優になることには反対だったんですよね。それが、「10年続けたら褒めてやる」と。

「先ほど挙げたような同世代の役者たちにも追いつきたいし、俳優として感じる面白さも出てき始めていました。ただ、正直な胸の内を明かすと、その時の自分は、オヤジに褒められたかったのかなと思います。それまで褒められたことがなかったので。オヤジに褒められるんだったら、と」

――実際、10年経って、誉められる機会は。

「僕は二十歳でデビューしました。二十歳のときの7月23日。忘れられない思い出です。だから10年は30歳だという思いがあったので、7月23日に、“オレ、10年経ったよ”と言ったのかな」

――お父さまは。

「できてよかったな、と言ってくれたと思います」

――緒形さんも、お父さまも嬉しかったでしょうね。

「そうですね。ただオヤジに褒められたかったのは事実ですが、役者としてスタートして、負けたくないと思った同世代の仲間たちと、一緒に作品を作り上げていきたいという気持ちも次第に勝っていったと思います」

 デビューから36年を過ぎ、緒形さんは俳優道を歩み続ける。

緒形直人(おがた・なおと)
1967年9月22日生まれ、神奈川県出身。映画『優駿 ORACIÓN』でデビューし、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、多数の賞に輝く。96年には映画『わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語』にて日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。近年の主な出演作に映画『護られなかった者たちへ』『川っぺりムコリエッタ』、ドラマ『六本木クラス』、松本清張ドラマスペシャル第一夜『顔』、2024年4月クールの日曜劇場『アンチヒーロー』での好演が話題を呼んだ。最新作はアイヌ民族と和人との歴史を描いた映画『シサム』、連続テレビ小説『おむすび』への出演も発表されている。

●作品情報
映画『シサム』
監督:中尾浩之
脚本:尾崎将也
出演:寛一郎三浦貴大和田正人坂東龍汰、要潤、富田靖子、緒形直人
配給:NAKACHIKA PICTURES
https://sisam-movie.jp/