9月19日にNetflixで配信がスタートするや、すぐさま国内再生回数1位を獲得したドラマ『極悪女王』。その主役こそが、プロレスラーのダンプ松本(63)だ。1980年代半ば~後半にかけ、日本中を席巻した長与千種ライオネス飛鳥のクラッシュ・ギャルズと、ダンプ率いる極悪同盟の凄絶な抗争劇。『極悪女王』ではその熱狂を、ダンプを軸にリアルに描いている。
 ドラマ配信開始に合わせ、世界最大のプロレス団体であるアメリカのWWEが、86年に同団体で行なわれたダンプの試合映像を緊急配信するなど、注目度は世界規模。そんな“時の人”に直撃!そのTHE CHANGEに迫る【第1回/全2回】

ダンプ松本 撮影/石川真魚

 ドラマでも克明に描かれているが、もともとダンプは「落ちこぼれ」だった。当時の全日本女子プロレス(全女)の給与体系は、1試合ごとの“試合給”だったため、試合が組まれなければ、ギャラは発生しない。さらに負けるとギャラが減額されるシステムで、落ちこぼれは極貧生活を余儀なくされた。

​「お金がないから、全女に入ってから3年間は母親から仕送りをもらっていた。実家も貧しかったから心苦しかったけど、そうしないと食べていけなかった。
 試合用の水着を買うとか、病院に行くとか、理由をつけていたけど、じつは全部ウソ。もらったお金はすべて食費に消えた。親が食べたいものを我慢して作ってくれたお金だと思うと、本当に申し訳なかったな」

 そんなダンプに人生の転機が訪れる。本名の松本香から「ダンプ松本」へとリングネームを改め、悪役レスラーとして注目され始めたのだ。

「会社からは“お前、これが最後のチャンスだからな”って言われたけど、それまでチャンスをもらった記憶がないんだよ(笑)。
 名前の由来は、埼玉の本庄市体育館で私の試合を見ていたお客さん“あいつ、ダンプカーみてぇだ!”と何度も叫んでいるのを(松永高志)社長(当時)が聞いたから。それで“よし、お前、明日からダンプな”って。最初は“熊谷出身だったよな? じゃあ、『ダンプ熊谷』で”と言われたから、“熊谷は勘弁してください、せめてダンプ松本で”って(笑)。それで、私はダンプ松本になったんだよ」