セリフを「覚えられる気がしない」本作品ならではの理由

 そのうえで、とんでもないセリフ量であることも今回の舞台の難所のひとつといえる。が、「それは、物量の問題じゃない」と続ける。

「“覚えられる気がしない”というのは、セリフ量の問題じゃないです。会話が成り立っていないからです。たとえば“今日はいい天気だね”、“夏も終わりだね”というセリフは前後で関連づいているので、覚えていくことができます。

 また、野球の話をしていたら、食事の話で返ってくる……くらいかけ離れていたら、それはそれで覚えやすいと思います。でも今回は、一見会話が成り立っているんです。これが恐ろしくて。“成り立っているぞ?”というルートを通ると破滅が待っていると思うので、“成り立っていないぞ”と言い聞かせながら覚えていくしかないなと。17歳のときにはじめて舞台に出演して、24年くらいになるのかな? 初めての挑戦になるかなと思っています」

 経験豊富な風間さんを四苦八苦させる今回の作品、より多くの人の目に触れてほしいと願わずにはいられないが、風間さん自身は「一番観てほしい方たちは、観ないと思う」と冷静に話す。

「コロナ禍や経済的な問題を経て、それが世界中で表面化しているいま、潜在的な鬱屈が溜まっている状態だと思います。そういう意味では、いまを生きる人たちに観てもらうことはとても意味のあることだと感じます。が……、これは役者は言っちゃダメだと言われるかもしれませんが、たぶん、一番観てもらいたい方たちは、劇場に来てくださらないんじゃないかと思っています」