新川帆立は、綾瀬はるか主演の『元彼の遺言状』や坂口健太郎が主演した『競争の番人』などドラマ化された大ヒット作で知られる小説家だ。しかし、そのキャリアは尋常ではない。「小説家になる前に、経済的基盤を確保するために弁護士になった」という言葉のとおり東京大学に進学し、司法試験に合格。弁護士として法律事務所で勤務したのち、小説家になった。唯一無二の道を歩んだ理由と「THE CHANGE」に迫る。【第2回/全5回】

新川帆立 撮影/松野葉子

 おそらく、「小説家になるために弁護士になった」という弁護士は、日本にふたりといないだろう。新川帆立さんは、その唯一のひとりだといえる。

「小さいときから小説家になりたくて、高校生になるとより本格的に思うようになりました。そこで出版業界について調べてみると、今は本が売れない時代らしい、と。小説家一本では、なかなか食べていけない現状があるのではないかと思いました。同時に、小説家を目指しているのにそれをあきらめる一番の原因は、経済的理由だろうと気づきました」

 高校時代、理系を選択していたこともあり、「医者なら医師免許を活かして自由に仕事ができるし、経済力も確保しつつ執筆活動もできるだろう」と思い、大学は東京大学の理科三類を受験した。

「でも落ちまして。ですがたまたま後期試験に受かったんです。当時の後期試験は、文理共通選抜で、合格後に進学先を選べました。理科三類以外であればどの科類でも進学できる仕組みだったので、進学先の学部を選ぶときに、“法学部なら医者と同じように、弁護士の国家資格取得がのぞめる。弁護士資格が取得できれば、とりあえず食べていけるだろう”と、法学部に進学する人が多い文科一類を選択したんです”」