メイド雀荘で卓を囲んだ日々

 一方で新川さんは、グレーやネイビーのオフィス系スーツを着て卓を囲んだ。

「でも、私も華やかな服を着るのは嫌いじゃないんです。学生時代、メイド雀荘でバイトしていましたしね」

「ちょっとはじけていた時期もあったんです」と、はにかむ新川さんは、より強くなるために、メイド服を着て麻雀を打つ日々を送ったという。

「麻雀が強くなりたくてバイトできる雀荘を探していたところ、“女の子が多いお店が働きやすそうだな”と思って、メイド雀荘を選んだんです。当時、ファンの方もできた一方で、2ちゃんねるにアンチスレが立ってめっちゃ叩かれていました。

 私はほかの子より強かったと思うんですが、2ちゃんでは“新川、強いか強くないか論争”が繰り広げられていたんです(笑)。懐かしいな」

 特異な経歴をひょうひょうと語る新川さんがこのあと、デビュー作からヒットを飛ばす小説家になろうとは、2ちゃんねらーたちが知ったらどんな反応をするだろうか。

■新川帆立(しんかわ・ほたて)
 小説家。91年2月、アメリカ・テキサス州ダラス生まれ。弁護士として法律事務所での勤務を経て、20年10月、『元彼の遺言状』で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞、21年1月より作家業に専念する。おもな著書に『競争の番人』シリーズ(講談社)や、『先祖探偵』(角川春樹事務所)、『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』(集英社)、23年6月『縁切り上等!-離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル-』(新潮社)ほか多数。