ムダなエネルギーなくできたことは、ある意味でCHANGE
「今回の展覧会は、僕の努力だけでできているというのが新しいんです。漫画でもアニメでも、できあがったものを届けるには、膨大な手間がかかりますよね。そういう余計なエネルギーを使っていないんです。もちろん展覧会も宣伝してもらったり、いろいろな人に協力してもらったりしていますが、作品を作るところは僕の努力だけでできていますから」
他者の思惑などが入り込まない、純度100%の楳図かずおさんで、『ZOKU-SHINGO』はできあがっているのだ。
「ムダなエネルギーなくできたということは、ある意味でCHANGEだと思います。今は時代が大きな転換点を迎えています。そういうときには、エネルギーロスの少ないやり方に向かわなきゃいけないと思うんです」
楳図さんの言う今の時代とは、インターネットやSNSが普及し、膨大な量の情報が錯綜する時代。そのようなときには、シンプルな方向に向かうべきだという。
「情報に影響を受けない自分たちの立場を、きちんと持たないといけないと思うんです。自分自身でシンプルにやる、自分の気持ちを突き詰めてやるということが、やっぱり大事だと思うんですよね」
自身のオリジナルを突き詰めて創作してきた楳図さんは、長い休筆期間を経ても、変わらぬ姿勢を保っていた。
「僕はある意味、ずっと人々に認められないような状態だったんです」
「僕はある意味、ずっと人々に認められないような状態だったんです。社会とかみ合っていないようなね。あの人にはなにしても平気だ、大丈夫だ、ぐらいの感じ。でもそれは、かみ合っていないだけで、みんなより少し前に進んでいたっていうことだったんですよ」
手塚治虫の影響を排して、独自の絵、ストーリーを模索し続けていた青年時代。ようやく見つけたホラー漫画は、当時の売れる漫画のスタイルとは合わず、否定された。しかし、時代が追いつき、ホラー漫画は大ヒットする。楳図さんはこれまでずっと、早すぎる漫画家だったのだ。
「だから漫画の賞だって、ほとんどもらっていないんですよ。1974年に小学館漫画賞をいただきましたが、推してくれた人はすごく少なかったんです。“賞なんていらない”って、思っていたんですが、2018年にフランスのアングレーム国際漫画祭『遺産賞』をいただいて、驚いたし、うれしかったんです。世界に認められたんだって」
アングレーム国際漫画祭「遺産賞」は『わたしは真悟』に対して贈られた。今になって、やっと時代が追いついたのだ。楳図さんの「秘密」は、間違いなく実現するだろう。