主演作『港に灯がともる』で変わった意識

──そう感じた理由は分かりますか?

「まだ本読みの段階で、衣装やヘアメイクもしているわけでもないんだけど、隣にいる家族や前にいる先生、出会っていく方々から、こんなにも受け取るものが多いんだということに、すごく気づいたんです。“自分がどうこうではなく、この人たちからもらうものを、どれだけ私が受け止められるか”なんだと。私の役者人生の中でも、ここまで確信を持てたことは初めての経験でした。そう思えた瞬間、“この人たちがいてくれたら、もう大丈夫”と思いました」

──大きな変化が。

「この作品と人との出会いが、私に大きな変化を与えてくれました。お芝居の価値観というか、芝居をする人として、誰かを演じるものとしての捉え方、受け入れ方がすごく変わったんです。
 いままでは、この主人公が生きていくために、自分が何を与えられるかを考えていたのですが、周りの人から受けるもので、(役として)生き抜くことができるのだと。そして、現場を通して、残したいと思える作品を残していきたいという、もの作りの現場にいる人間なんだということへの意識が、ガラリと変わった作品になりました」

 今回、主人公を演じるうえで、まずは「自分を空っぽにしなければいけなかった」と話していた富田さん。大変な作業だったはずだが、一度まっさらにしたからこそ、役者として、作り手としての意識に大きな変化が訪れたのかもしれない。

(つづく)

富田望生 撮影/有坂政晴

とみた・みう
2000年2月25日生まれ、福島県いわき市出身。2015年、宮部みゆきの小説を成島出監督が映画化した「ソロモンの偽証 前篇・事件 / 後篇・裁判」にて、1万人が参加したオーディションでメインキャストに選ばれ、俳優としての活動を開始。数多くの映画やドラマに出演している。主な出演作に『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』(2017)『SUNNY強い気持ち・強い愛』(2018)『私がモテてどうすんだ』(2020)、ドラマ『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』(日テレ系)『教場』(フジテレビ系)『だが、情熱はある』(日テレ系)、配信ドラマ『宇宙を駆けるよだか』『ブスの瞳に恋してる 2019』、連続テレビ小説『なつぞら』『ブギウギ』(NHK)など。
ヘアメイク:千葉万理子 Chiba Mariko
スタイリスト:阪上秀平 Sakaue Shuhei
中に着たシャツワンピース\53,900(税込み)PONTI
フリンジワンピース\49,500(税込み)PONTI
その他スタイリスト私物
お問い合わせ先:MAEDA DESIGN LLC. 03-6280-4408

●作品情報
『港に灯がともる』
2025年1月17日(金)公開
監督・脚本:安達もじり
脚本:川島天見
出演:富田望生、伊藤万理華、青木柚、山之内すず、中川わさ美、MC NAM、田村健太郎、土村芳、渡辺真起子、山中崇、麻生祐未、甲本雅裕
配給:太秦