知性がにじむ物静かな役から、狂気をはらんだ人物まで、自在に行き来する俳優・佐野史郎さん。日本のアングラ演劇の最重要人物・唐十郎氏が主宰する「状況劇場」で活躍したのち、映画やテレビへ活動の場を広げ、ドラマ『ずっとあなたが好きだった』(TBS・1992年)で演じたエキセントリックなマザコン“冬彦さん”はセンセーションを巻き起した。
テレビや映画に欠かせない名優には、ミュージシャンという別の顔がある。佐野さん自身が人生最大の“THE CHANGE”と語る、2020年に発覚した多発性骨髄腫の闘病時も、病室で片時もギターを手放さなかったという。表現者・佐野史郎にとって演技とは、音楽とはなにかをじっくり語っていただいた。【第3回/全5回】
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レジェンド4人によるバンド、SKYEが再始動したのは、偶然が幾重にも重なった奇跡……、いや、もはや必然だったのかもしれない。佐野さんの話を聞けば聞くほど、出会うべき人には出会ってしまうという、運命のようなものを感じずにはいられない。
「僕は、タイムスリップやFUJI ROCK FESTIVALに出たSanchというバンドを経て、ゼラチン・シルバー・ミュージック・クラブ・バンド(Key/元JAGATARAのエマーソン北村氏、B/横道坊主の橋本潤氏、Dr/元jaco:necoのGRACE氏)を組んだのですが、2014年に橋本が亡くなり、バンドは休止状態でした。ボサノヴァからハードロックまでやる幅の広い音楽性を備えたバンドで、彼以外にベーシストは考えられませんでしたから」