「吸収してきたことを、あの時代に返したい。それがいまの自分にとって、自分を活気づける源」

「昔から、そうやって区別することなく、演技と音楽を同じようなボリューム、熱量でやっていた方々はたくさんいらっしゃいました。フランキー堺さんやハナ肇さんや植木等さんらのクレイジーキャッツも、皆さん一流のジャズ・ミュージシャンでしたよね。
 あの時代に育ててもらったという思いは、音楽だけに限らずありますね。唐さんもそうですし、60年代から70年代を築き上げてきた人たちから学んだことや、吸収してきたことを、あの時代に返したいみたいな気持ちもあるんです」

佐野史郎 撮影/有坂政晴

「誰に対してというより、若き日の自分自身にということです。50年なりがたって、自分がこれまでやってきたものを自分に向けてたたきつけるじゃないけど、そうしてまた循環させるみたいな感覚です。それがいまの自分にとって、自分を活気づける源でもある。
 無自覚というか動物の本能として、生命力を生き生きとさせるためにやるんです。いい食べ物を身体に入れて、生き生きとさせたいってことなのかな。まあ、その割にすげえ病気しましたけどね(笑)。」

 あくまでも推測だが、2024年に他界した唐十郎氏をはじめ、親交のあった加藤和彦氏(音楽プロデューサー/ザ・フォーク・クルセイダーズやサディスティック・ミカ・バンドなどで活躍した)やシーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠氏、ムッシュかまやつ氏、内田裕也氏など、素晴らしい表現者たちの旅立ちを見送ってきた佐野さんは、自らも死を間近に感じたことで70年代に受け取った恩恵を次代にも残したいという思いを強めたのではないだろうか。