以前はメディアへの露出を控えていたが、考えが変わったという
鈴木さんは、これまであまりメディアへの露出に積極的ではなかった。しかし、恩師がこの世を去り、自分も人生の折り返し地点を迎えると、自分が表に出ることで盆栽の魅力を広く伝える助けになるならと、今回の取材に応じてくれた。これも鈴木氏にとってはひとつの“THE CHANGE”だろう。
「盆栽には人の愛情、命の理念のようなものが詰まっていますから、盆栽を好きになる人が少しでも増えて、その素晴らしさを感じていただけたらいいなと思うようになったんです。
特に欧米の方は、命のつながりや美術的価値の高さに関して、共感を示してくださると感じます。古いものを大事に受け継ぐ文化が根付いていますし、いまは戦争や紛争が身近ですから、おそらく命の尊さについて考えることも多いのでしょう。国内では『サザエさん』の波平さんの趣味みたいなイメージを持つ人もいらっしゃいますが、日本で平安時代から続いてきたことに、文化継承の大切さや命の尊さを見るのかなと」

「例えば、小さな桜の盆栽にも四季があり、春になるとちゃんと花を咲かせる……。欧米の方からすると、人の愛情によって何百年も生き続けているものは盆栽だけのようで、その事実に驚がくするんです。若い世代は環境問題にも熱心ですから、目の前の循環や持続可能性に心惹(ひ)かれるのかもしれません。
SNSを介して、盆栽の美しさが拡散したこともあって、僕の小布施の盆栽園にも海外からたくさんの方がお越しくださいます。はじまりは興味本位でも、自分なりに勉強して盆栽の奥深さに魅了されていく若者も多いですね。おかげで、盆栽を学ぼうと欧米やアジアなど世界中からお弟子さんがたくさん来てくれます。6年間の修業期間ですべてを吸収しようとすごく真剣ですから、僕も毎日とてもやりがいを感じます」