安倍晴明の世界を描くJAPAN THEATER 『SEIMEI』。異なる分野のクリエイターが参加することで生まれる新しい作品への期待とその可能性を語ってくださった市川團十郎さん。
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歌舞伎が持つ伝統と革新のバランス。固定概念を打破する必要性や、伝統を守りながら新しい表現を模索することの必要性……伝統芸能としての歌舞伎の本質を保ちながら、いかに現代に適応していくかという課題に対する團十郎さんの真剣な姿勢が見えてくる。【第2回/全3回】
2022年11月に「十三代 市川團十郎」を襲名。まさに“CHANGE”といえる大きな出来事だ。2年間にわたる襲名公演を終えた今、これ以上ない“CHANGE”だったのでは、と尋ねると「長かったですよね」とサラリと語る。襲名公演をやり遂げたことで今感じていることは?との問いには意外な答えが返ってきた。
「やり遂げた感はまだないですね。いや、“興行をやり遂げた”という思いはあるんですけど、團十郎としてはこれから始まるので、まだやり遂げてないんですよね。この間も節分の豆まきに行ったときに、“海老蔵さん!海老蔵さん!”って声援を半分ぐらいいただいて、“團十郎さん”って呼んでくださったのは半分ぐらい。まだそんなもんですよね。新之助から海老蔵になったとき(七代目新之助から十一代目海老蔵に2004年に襲名)もそんな感じでした。
海老蔵という色付けをした名前を捨ててわざわざ新しく團十郎になるってことは、歌舞伎の歴史の中では重たいことですけど、世の中的にはむしろデメリットですから。多くの人に認知をされている名前を捨てるわけで、皆さんも慣れてない。そういう意味で知名度を捨てて、團十郎になってやっていくことって、負荷がかかってくるんです。でもそういったことを楽しめるような自分であることが大事かなと思っています」