大学時代に取り組んだ変化
野球部が強くてよかった。それは野球の技術が磨けたり、華やかな世界を見られた、ということではなかった。
「自分は内部進学だったんで、ピッチャーの中で一番下手くそだったんです。この場所にいて、どうやったら試合に出られるんだろうって考えたときに、フォームをアンダースローに変えて技巧派に転身したんです。球速ではもうかないませんから。
いまいる世界で生き残るために恐れず変化をする、そういうことを考える力がついたということは、芸能界に入っても役に立っていると思います。俳優も自分のやりたい役ができるわけじゃない。いただいた役が得意でなくても全力で取り組まないといけない。そこは野球をやっていて、よかったところです」
22歳でのデビューというのは、最近の俳優として早くはない。しかしそれまで野球に費やしてきた時間は、けっして無駄ではなく、むしろいいほうに作用しているようだ。
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父・中山秀征のすごさを実感する毎日
野球をやってきたからこそ、いまの中山さんがあるといえるだろう。では、父親であり有名タレントである中山秀征さんの影響はあるのだろうか?
「実は父の出演していたテレビ番組は、あまり見ていないんですよ。昼間の放送が多くて、その時間は野球をずっとやっていたんで。夜やっている特別番組は見ていましたけど」
あれほどの売れっ子の番組は見ていなかった。が、芸能界に入って、父のすごさを感じることがあったという。
「よく言われていたんです。世の中は最終的には人と人だから、そこは絶対に大切にしたほうがいいと。デビューのタイミングにも、スタッフさんをはじめ、いろいろな人が見ているんだから、全員に対して誠実であるようにと言われました。
実際に仕事をするようになって、現場でいろいろな人から“あのときはこんなことがあって”とか、父の話を聞いたりするんですけど、全部、いい話なんです。そうやって父は築き上げてきたんだなって、自分もそこは見習わなきゃいけないなって思います」
その活躍する姿を見る機会はあまりなかったが、中山さんにとって、父・中山秀征さんの存在は大きかったようだ。
(つづく)
中山翔貴(なかやま・しょうき)
1999年東京都生まれ。幼少期から16年野球を続け、青山学院大学在学中には同大の硬式野球部に所属し、7年ぶりの東都一部リーグ昇格に貢献する。大学を卒業後は俳優の道に進み、22年のドラマ『しろめし修行僧』(テレビ東京系)で俳優デビュー。その後、『下剋上球児』(TBS系)、『おむすび』(NHK)などの話題作に出演する。また、格闘家の朝倉未来がエグゼクティブプロデューサーを務める映画『BLUE FIGHT〜蒼き若者たちのブレイキングダウン〜』に出演、25年3月には『クレイジーレイン』で舞台に初挑戦するなど、幅広く活動している。
(作品情報)
舞台『クレイジーレイン』
新宿シアタートップス
3月5日(水)〜3月9日(日)
脚本・演出: 木下半太
出演:中尾暢樹 池岡亮介 納谷健 中山翔貴(Wキャスト)真弓(Wキャスト)
主宰・企画・製作: WATANABE ENTERTAINMENT
公式サイト: https://crazyrain.westage.jp/