現在、35歳の岡田将生。2025年はデビューから19年目になるが、役者として脂が乗ってきたことは、このところの活躍から誰の目にも明らかである。映画『ゆきてかへらぬ』では文芸評論家・小林秀雄役に挑んだ。タッグを組んだのは、『探偵物語』『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』の名匠であり、大学理事長の顔も持つ根岸吉太郎監督。邦画界を背負っていく岡田と、1974年に映画界に飛び込み、後進の育成も続ける監督が、THE CHANGEを語る――。【第4回/全4回】

根岸吉太郎、岡田将生 撮影/冨田望

 大正から昭和初期を舞台に描く『ゆきてかへらぬ』。根岸監督が、新進女優・長谷川泰子と詩人・中原中也、文芸評論家・小林秀雄という実在の3人の奇妙な関係を、広瀬すずさん、木戸大聖さん、そして岡田将生さんをそれぞれに配して撮りあげた。

岡田「現場に入ってみて、脚本を読んでいる以上に、こんなにも3人の中に渦巻いているものがあるんだと感じました。だから常に疲労感があったんです。広瀬さん、木戸さんとのセッションを楽しんではいるんだけど、泰子も中也も、小林もそうなんで、みんなブレない強さがあるから、互いに入り混じる瞬間が、実はこの映画の中で少ない。

 だからこそ逆に、たまに入り混じると快感があったし、それを感じられるのも、広瀬さんと木戸さんとのセッションだからだろうと。割と客観的に見ている自分もいました。

 役として、とても不安を感じる時間もあったんですけど、そうした様子を、監督もスタッフさんもどこか楽しんでいるように僕には見えました。だから僕もこれは楽しむべきなんだなと思いました。小林として感じているこの空気感を、どうにか表に生かそうと、考えるのも楽しかったですね」