フリーアナウンサーの堀井美香さんがTBSを退社したのは昨年、50歳の時。ニュースやナレーションなどで安定感のある読みを見せる一方、永六輔さんや久米宏さん(78)など、ラジオの名パーソナリティたちのアシスタントでは天然な性格がたびたび披露され、多くのリスナーから愛されていた堀井さん。女子アナブーム真っ只中で入社してから、現在のフリーに至るまで、女性アナウンサーとして体験してきた「CHANGE」を聞いてみた。

堀井美香 撮影/三浦龍司

アナウンサーの聴く仕事

「今日はよろしくお願いします」
取材場所に入ってきた堀井美香さんの声はラジオやテレビ番組のナレーションで聞き慣れた、柔らかなトーンだった。しかし、インタビューを進めると、その声の印象とは裏腹にしっかりとした芯を持っていることが分かった。

 この5月に発売された堀井さんの著書が『聴きポジのススメ 会話のプロが教える聴く技術』(徳間書店)。会話の中でうまく聴くポジションに徹することで、良好な関係を築けると説いた本だ。話すのが仕事のアナウンサーが、なぜ「聴くこと」をすすめるのだろうか?

堀井「実はずっと聴く側の人間だったんですよ。もともと生まれたのが秋田の田舎で、女性はあまりしゃべらないほうがよいよ、という空気の中で育ったので。本当は、自分自身も聴いている立場のほうが心地よいです」

 アナウンサーというのは、意外と聴く仕事も多いようだ。

堀井「私にくる仕事が、アシスタントだったりインタビュアーだったり、聴く役割が多かったんですよ。ただ、自分でそれが得意とは意識していなくて、今回の本もお声がけいただいたときに、“私に?”って思ったぐらいです」