永六輔の教え
堀井「放送中に私の”うんうん“のようなうなずきが多すぎると、番組にリスナーからクレームが入ったんです。当時は反応の良いアシスタントを目指していて、相手が言うことに“なんとかですよね”と返していくことをやっていたんですけど、それに“これは永さんの番組です。もう少し黙っていてください”という手紙がきてしまって」
意気込んでいたものの、それは空回り。この件を永さんに相談したところ、「10回しているうなずきは1回でいいです。僕はその1回にちゃんと乗っていきますから。その1回をいつ入れるかは、9回ぶんの時間で考えなさい」というアドバイスが返ってきたという。
堀井「むやみにハイハイと言うのではなくて、ちゃんと話を聞いて、ここぞというときにうなずきを入れてください、ということだったんです。永さんはなにかあるたび、いろいろとおっしゃってくださいましたね」
もうひとりのレジェンド、久米宏さんはどうだったのだろうか。
堀井「久米さんからは特に何もなかったですね。たぶん、私へのアドバイスを、早々にあきらめてしまったんだと思います」
育った環境、そしてラジオの仕事の中から、聴きポジは育まれていったのだ。
■プロフィール
堀井美香(ほりいみか)
1972年、秋田生まれ。1995年、TBSにアナウンサーとして入社。永六輔さん、みのもんたさん、久米宏さん、ジェーン・スーさんなど、個性的な話し手のアシスタントを長年にわたって務める。2022年3月に退社し、フリーアナウンサーとして活動を開始。テレビ番組やCMのナレーションのほか、ジェーン・スーさんとのポッドキャスト『OVER THE SUN』で活躍。長年、取り組んできた朗読会にも精力的に取り組んでいる。近著は『聴きポジのススメ 会話のプロが教える聴く技術』(徳間書店)。