Zeebraさんは超紳士
ーー言語学者が『フリースタイルダンジョン』に出る、というのはあらためてすごいですよね。
「たしかに、今考えるとすごいことですよね。だいぶ叩かれもしましたけどね。私のこと知らないヒップホップファンにしてみれば、いきなり大学の先生がフリースタイルダンジョンの審査員やるっていうのは、確かに気にくわないことだったと思います。でも、韻にこだわった審査をして、一部からは支持を得たんですよ」
ーーZeebraさんと最初に会った時は、どんな感じだったんですか。
「紳士だなあ、と思いました。Zeebraさんは、ゴールドチェーンを着けて、ヒップホップファッションをしている姿の印象が強かったから、バッチリスーツを着こなして、タクシーからロングスカーフを垂らして降りてきた時は、ああ、紳士的な人なんだなあって思いましたね。
お話ししてみると、やっぱりZeebraさんは、韻に対してすごいこだわりのある人で。正直に言うと、最初にお会いして、ご飯を食べた時のことは、緊張しすぎて覚えてないんですけど(笑)でも、Zeebraさんの授業に行ったとき、Zeebraさんが言っていることのなかで、私の分析とバッチリ合うところがたくさんあって。
私、ラッパーたちって、言語学的な要因を無意識に韻に取り込んでいるんだと思っていたんですね。言語学の知識がないと、こんなこと意識的にはわかるわけないって。そう思っていました。でも、Zeebraさんはそれを明言していたんですよ。
たとえば「愛」という言葉がありますよね。この「ai」っていうのは、一つの音節だから、「愛」と韻を踏む時には「秋」みたいに音節が分かれた単語は使わないようにしましょう、みたいなことを授業でおっしゃった。
「ai」が一つの音節だって知っている言語学専攻でない日本人に会ったことなかった。だから、この人は言語に対する感性がびんびんに高いんだな、って思いました。やっぱりそこでもう1回、日本語ラップの研究って面白いなって思いだしたんですよね」