「変態って呼ばれるのも、とてもありがたいことです」

ーーずっと曲を聞いてたZeebraさんに。

「そうですよ。会えると思ってなかったし、自分の分析に興味を持ってくれるなんて思ってなかったし。初めて会うときには、ただの一ファンとしてお会いしましたね。もちろん授業にも出席しましたし、そのあと対談する機会も頂きました。
 Mummy-Dさんにはのちに出会うことになります。Dさんは、今では私を変態って呼んでくれているんです。ラップの好きになり方が、マニアックすぎて、ちょっと気持ち悪いらしいです。私にとっては最高の褒め言葉ですが。」

ーーそうなんですか。

「いい意味でね。あこがれのあの人に変態って呼ばれるのも、とてもありがたいことですよ」

ーー具体的にどのへんが変態なんでしょう。

「このライムのこの子音とこの子音の合わせ方が素敵ですね、とか、ここの字余りってこういう言語学的な要素を考えると本当に技巧的ですよねとか。Dさんのアクセントの揃い方も素敵ですよね、とかっていうほめ方をするから」

ーー確かに、あまりそうやってほめる人はいらっしゃらないかもしれないですね。言われた方は嬉しいんじゃないですか。

「ラッパーのみなさんに嫌われている証拠はないですね」

ーーそんな遠回しな。

「いやでもね、変な視点から鑑賞しているっていう自覚はあるんですよ(笑)でも、Zeebraさんも、もちろんよくしてくれて、対談したあと『フリースタイルダンジョン』に審査員として呼んでくれたんですよ」

『フリースタイルダンジョン』は、2015年から2020年までテレビ朝日で放送されていた、日本のヒップホップの現在の隆盛を築いた偉大な番組。Zeebraをオーガナイザーとして、挑戦者がモンスターと呼ばれるラッパーとフリースタイルバトルで勝ち抜いていくというスタイルに、視聴者は熱狂。

 R-指定、呂布カルマ、崇勲、輪入道、般若、T-Pablow、晋平太、DOTAMA、TKda黒ぶちといったラッパーたちは、この番組から絶大な知名度を獲得していった。