M-1は優勝したけど、ジワジワと来た感じ。優勝でさらに追い風が吹いた感覚はないですね」とさらりと語る銀シャリの橋本直。自らを「テレビっ子」と語る橋本はテレビに出たくて漫才を始め、バイト終わりに熱心に練習していたという。相方の鰻和弘は「僕は人間的にマシになった」と笑う。結成から20年、さらに脂がのってきたコンビの「THE CHANGE」とは?【第2回/全5回】

銀シャリ 撮影/冨田望

——2016年のM-1グランプリ優勝まで、2回ファイナリストになっていますよね。

橋本「いや、ちょっと間が空いてますよ。2010年から2015年まで空いてます。空白期間が4、5年あるんです」

 銀シャリは2010年に開催された第10回のM-1で決勝戦に初めて進出し、5位という結果を残した。だが、同年の大会でM-1がいったん終了。2015年に開かれた第11回大会で惜しくも準優勝したのち、翌年の第12回大会で和牛とスーパーマラドーナを下し優勝した。

——あらためて、優勝したときはどんな気持ちでしたか?

橋本「1本目は点数が高くて1位通過してるんですけど、2本目は接戦すぎて、完全に抑えたっていう満足感みたいなのが正直なかったんです」

鰻「憧れは完全に、“銀シャリ”と全部めくったほうがね」

橋本「めちゃくちゃ嬉しい気持ちはもちろんありましたが、『あ、優勝しちゃった』って感覚もどこかでありました。目標があるほうが頑張れるんですけど、もうM-1優勝しちゃったし……と。でも全部めくれてないから、漫才をますますしっかりやらないとと思いまして。

 優勝したくてもできないこともあるから、優勝できたことはありがたいし、運があったなと思うんですけど、完全燃焼できなかったのも、“もっと頑張ろう”と思えたので結果的に良かったかなって思います。2本目のネタは他の人たちも強かったので、ふんわりした勝ち方の優勝の仕方というのが、ある意味ターニングポイントだったかもしれないです」