僕の声優人生は、さまざまな魅力的なキャラクターとの出会いの繰り返し

 納谷さんはハードボイルドとコメディを織り交ぜて演じる方で、そのバランスが絶妙でした。そんな納谷さんに、一生懸命寄せようと必死にやっている自分がいて、かわいかったんです。そんなに悪くないじゃないか、と思いました。今回、そんな僕の銭形を観た誰かが、「いいんじゃないか」と思ってくれるとしたら幸せなことです。

 僕の声優人生は、銭形を始めさまざまな魅力的なキャラクターとの出会いの繰り返しです。他の業界の方に言うとびっくりされますが、僕もたまにオーディションを受けるんです。落ちることだってあります。それで落ち込んだりもします。「魅力的な作品だしキャラクターだし、これは絶対にやりたい!」と思い入れを込めて挑んだのになあ……と。その作品は見たくないなと思うほど、落ち込みます(笑)。さらにその作品が大ヒットした暁には……。素晴らしい作品だと思う一方、正直悔しくてしょうがない。綺麗事じゃないんです。

 だけど、「そのあとに絶対になにかが巡ってくる」、そんなふうに昔から思うようにしているんです。

 オーディションを受けて、 ほぼ決まりかけだと言われ、原作を丹念に読み込んで、「ついにこういう役をやれるようになったか! やったあ!」と意気込んでいたのに、大逆転でほかの方が受かったことがありました。その直後、生涯すごく大切になる役をいただいたんです。ふたつの作品は同時期に放送されたので、前者に受かっていたら後者は出合えなかったかもしれない。それは誰にも分からないし、両方できていたかもしれないですが、「落ちたからこそ、出合えたんだ」と思いました。

山寺宏一(やまでら こういち)
1961年生まれ、宮城県出身。声優、ナレーター、俳優、タレントとして幅広く活躍。「七色の声を持つ男」との異名を持つ、声色が持ち味。代表作だけでも『新世紀エヴァンゲリオン』(加持リョウジ役)や『ルパン三世』(銭形警部役)などのアニメから、米俳優のジム・キャリーやブラッド・ピットなど、洋画での吹き替えなど、数多くの作品に出演。

『LUPIN THE IIIRD  銭形と2人のルパン』
極寒の地、ロビエト連邦で発生した空港爆破テロ。容疑者として浮かび上がったのは、まさ
かのルパン三世。しかし、銭形が追い詰めた“もう1人のルパン”は、無実を主張する。正義を貫く男・銭形は、謎に包まれた“偽ルパン”と対峙することになる――。盗まれたのは おまえ自身か…
6月20日(金)より、下記配信サービス他で配信開始
アニメ放題/FOD/dアニメストア/DMM TV/バンダイチャンネル/Hulu/Lemino/U-NEX-T/WOWOW オンデマンド他
原作:モンキー・パンチ (c)TMS