「七色の声を持つ男」との異名を持つ声色が持ち味で、声優、ナレーター、俳優、タレントとして幅広く活躍する山寺宏一さん。11年演じている『ルパン三世』の銭形警部役への思いとはーー。【第2回/全2回】

最近もありました。とてもやりたかった役ができないと分かった直後、同じように魅力的な役が巡ってきたんです。すごく悔しかったけど、「あれをやっていたら、これはなかったかもしれないな」と。「できなかったおかげだ」と思っています。誰に確認しようもないので、自分の中だけでそう思うようにしています。
でも、ここまでのキャリアで本当にいい作品に巡り合いすぎているという実感はあります。周りの人にも「山ちゃん、やりすぎだろう」と言われておかしくないくらい、恵まれていると思います。特に声優は作品やキャラクターとの出合いが大きいですから。
アニメと洋画の吹き替えの違いを聞かれることが良くあります。アニメの場合は、スタッフの方が生み出した絵に声を当てることを「魂を入れる」と表現しますが、声のお手本がないので絵や脚本を元に表現の幅が広く使えます。実写の吹き替えの場合、その俳優さんの肉体から日本語が出るとしたらどうなるのか、そんなことを考えながら、なりきってアフレコしています。そして、日本語としてお客様にちゃんとその映画の良さや、人物の魅力をあますことなく伝えられれば、という思いでやっています。
すべてに共通して言えるのは、「この作品で、何を求められているか」ということを客観的に理解して演じなければならない、ということです。それが、声優にとって大事なことかなと思います。