本当に大きかった二人との出会い

 一つは映画『渚のシンドバッド』(1995年)。岡田さんにとって初めての映画出演で、6人の高校生男女が織りなす青春群像劇。岡田さんは主人公・伊藤修司を演じた。

「この映画の橋口亮輔監督に出会うまでは、台本を読んでセリフを覚えて、現場でどうやってうまく言うか……という感じでやっていましたが、橋口監督は”人を作る”という根本からの工程を大事に教えてくれました。それまで演劇学校やワークショップに参加したことはなく、独学で現場で叩き上げられてきたので、橋口監督との出会いは大きかったです」

 この作品で岡田さんは、単なるセリフ回しや演技のテクニックではなく、役の内面や人間性を深く掘り下げて表現することの大切さを学んだ。現場での“叩き上げ”から、より本格的な役作りへと意識が変わった重要な経験であり、「演じる」という行為の本質を見つめ直すきっかけとなった。

 もう一つは舞台『カラフト伯父さん』(2005年)。神戸を舞台に、阪神大震災で心に傷を負った3人が希望を取り戻すまでを描いた物語で、岡田さんは主人公・星山徹を演じた。

「鄭義信さんが演出を務めた舞台で、橋口監督の時と同じく、人の心がどう動いていくのかを一つ一つ丁寧に向き合って教えていただきました。こんなことを言うと”じゃあ俺は?”って思う監督や演出家もいるかもしれませんが、僕にとってはこの二人との出会いが本当に大きいと思っています」

 この舞台では、登場人物の心の動きや感情の機微をじっくりと掘り下げる作業を重ねたことで、俳優としての表現の幅が大きく広がった。また、舞台というライブ感のある環境で、観客の反応をダイレクトに感じながら演じることで、より深い表現力や瞬発力も身についたという。

 こうした転機となる作品や出会いを通じて、岡田さんは「役を生きる」ことの意味や、作品ごとに異なるアプローチの大切さを体得し、俳優としての大きな成長を遂げてきた。今の岡田義徳の自然体で奥行きのある演技は、こうした経験の積み重ねによって培われたものなのだ。

 そして30代半ば、岡田の人生にはプライベートで大きな出来事が待ち受けていた──。

(つづく)

岡田義徳(おかだ・よしのり)
1977年3月19日、岐阜県生まれ。AB型。1993年、バラエティ番組『浅草橋ヤング洋品店』で芸能界デビュー。翌94年、ドラマ『アリよさらば』で俳優デビューを果たす。以降、『木更津キャッツアイ』(2002年)、NHK大河『篤姫』(2008年)、『八重の桜』(2013年)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年)、『むこう岸』(2024年)、などのドラマ、『映画THE3名様Ω〜これってフツーに事件じゃね?!〜』(2024年)、『君の忘れ方』(2025年)などの映画、『歌うシャイロック』(2023年)、『来てけつかるべき新世界』(2024年)などの舞台に出演。今年10月に開演される音楽劇『MONDAYS/このタイムループ、まだまだ終わらない⁉』への出演が予定されている。
ヘアメイク/SHUTARO(Vitamins)

〈作品情報〉
木ドラ24『量産型ルカ‐プラモ部員の青き逆襲』
出演:賀喜遥香(乃木坂46)、筒井あやめ(乃木坂46)、山崎竜太郎、小林桃子、尾木侑樹奈(LINKL PLANET)/岡田義徳
毎週木曜日、深夜24時30分~よりテレ東系にて放映中。
公式サイト: https://www.tv-tokyo.co.jp/ryousangataruka/
(c)「量産型ルカ」製作委員会